創業者紹介

カンナキッチン

吉本 由美子

Yumiko Yoshimoto

「自分のお店を持ちたい」。
子どもの頃からの夢を
家族の力を結集して実現!

吉本 由美子56years old

Yumiko Yoshimoto

下松市生まれの51歳。夫が経営する工務店の仕事を手伝いながら、料理や創業のノウハウを学ぶ。夫の両親の家をリノベーションして、2017年6月に「カンナキッチン」をオープン。
 
カンナキッチン
創業:2017年6月
住所:防府市田島2324
FB:https://ja-jp.facebook.com/kannatokitchen/

子育てが一段落したのを機に「自分のお店を持つ」という小さい頃からの夢をかなえた吉本由美子さん。住宅街の一角にある「カンナキッチン」は、建築事務所に勤める息子さんが店鋪デザインを、大工であるご主人が建物や備品を、そして妻の由美子さんが地産地消、安心安全にこだわった料理を担当する、家族の力を結集してできたお店です。主婦から経営者へと転身した吉本さんに、創業までの道のりや現在、今後の目標などをお聞きしました。

食に興味を覚えた背景を教えていただけますか?

小さい頃からままごと遊びが大好きで、漠然とではありますが、いつか自分のお店を持ちたいと思っていました。おそらく手作りの料理を大切にしていた母の背中を見て育ったことも関係していると思います。結婚・出産を経て、主婦業をこなしながら家業である工務店の手伝いをしていたのですが、その想いはなんとなく心の片隅に残っていて…。また、子どもたちが通っていた保育園の給食が、地産地消やスローフードに力を入れていたことなども影響して、食についてもっと深く学びたいと思うようになりました。

創業しようと思われたきっかけを教えていただけますか?

子育てが一段落したのを機に、広島のフードコーディネーターの養成校に通い始めました。店鋪コンセプトの立案や原価計算といった飲食店の事業計画全般に関わることはもちろん、売れるメニューの考案、テーブルコーディネートなど、さまざまなことを学びました。 全ての講座が終了したときに、先生から「公民館の料理教室の講師をやってみない?」と誘っていただきました。初めての経験なので最初は迷いましたが、1年間という期間が決まっていたのでチャレンジすることにしました。レシピを考えるのは当然ですが、毎回どうやったら皆さんに楽しい場を提供できるかを考えるのに必死でしたね。最終日には、生徒さんから感謝の言葉とサプライズの花束をいただき、感激して大号泣してしまいました。そのとき、食で人に喜んでもらえることを実感して、自分に自信が持てるようになりました。やっぱり私のやりたいことは、食を提供して喜んでもらうことなんだ、と改めて思いましたね。

創業にあたってどこかで学ばれましたか?

まずは、料理の腕を磨くために、さまざまな料理教室に通いました。そのときのつながりで知ったのが、山口県と(公財)やまぐち産業振興財団が主催する「女性創業セミナーWITTY」です。週に1回、3カ月間の受講でしたが、とても内容が濃く、半年くらい通ったような感覚でした。 フードコーディネーターの養成校で学んだことを復習しながら、具体的な数字に落とし込んで事業計画書を作成していきました。やるべきことを少しずつこなしていくことで、起業への道筋がハッキリと見えてきたので、本当に参加して良かったと思いますね。最後に金融機関の方の前でプレゼンをするチャンスをいただき、一生懸命学んできたことを評価していただきました。そのおかげで無事、銀行からの融資も受けることもできて、店鋪の外装・内装はもちろん、厨房機器、器にいたるまで、希望していた通りのお店ができました。

そのほかにセミナーで得たことはありますか?

何よりも良かったと感じるのは、創業という同じ志を持つ仲間との出会いです。普通のママ友とは、事業計画や収支決算の話って、なかなかできませんから。でも、WITTYで知り合った友達とは、経営の悩みを共有したり、励まし合ったりすることができる。仲間の存在にとても勇気づけられました。 セミナーで出会った方々とは今でも連絡を取り合い、相談をしたり、情報を交換したりして、いい刺激を受けています。

創業のためにどんな準備をされましたか?

最初は、山口市や周南市の物件が候補として上がったのですが、通うのも大変だし、家賃や改装費のことを考えるとちょっと難しいかなと…。そこで思いついたのが、空き家となっていた夫の両親の家でした。初代の棟梁である父と、それを支える母のたくさんの思いが詰まった場所を、そのままにしておくのはもったいない。そう考えて、夫の実家をリノベーションすることに決めました。店鋪デザインは建築事務所に勤める息子に、建物やテーブルなどの備品は大工である夫が担当することになり、「これはもうやるしかない!」と家族に背中を押された感じでしたね(笑)。 家族の力が結集したことで、店づくりへの思いはさらに強くなりました。パンフレットやフライヤーなどの販促ツールは、WITTYで知り合った友達の紹介で「山口県よろず支援拠点」に相談に行った時に紹介していただいた中小起業診断士の先生やデザイナーの方にお願いしました。ホールスタッフはお友達数人に声をかけて集めました。

創業までの道のりは順調だったのですか?

実はオープンの10日前になって急に不安になって…。フードコーディネーターの養成校でお世話になった先生に相談したところ、わざわざ広島から駆けつけてくださったんです。そこで「一体誰のお店なの?コンセプトは?」と問いただされました。これまで散々習ってきたことだったのですが、アピールの仕方がいまひとつだったんですよね。早速コンセプトを見直しました。食と住、私と夫のそれぞれが大切にしてきたことを、先代の思いが詰まった場所でひとつの形にする。店名の前に「大工おかみの台所」というキャッチフレーズを加え、店鋪の壁に大工道具を飾ったり、カンナに見立てた箸置きを夫に作ってもらったりして、コンセプトがより伝わるように工夫しました。

創業後、現在の状況はいかがですか?

Facebookで告知したり、テレビや雑誌などのメディアが取り上げてくれたこともあって、多くのお客様に知っていただく機会となりました。ランチが1,500円と価格設定についてはやや高めですが、今のところ、お客様に満足していただけているようでホッとしています。でも、待っているだけでは経営を安定させることはできないと考え、オードブルのケータリングや病院で出産されたママを対象にしたお祝い膳などの新しい試みも始めました。口コミのおかげもあって、お店の予約もケータリングの数も徐々に増えており、順調に経営できています。

創業後、想定外のことはありましたか?

子ども用椅子などを用意していないにも関わらず、お子様連れのお客様が多かったことです。ママが子どもと一緒にくつろげる癒しの場所を求めていること、子どもにも安心安全なものを食べさせたいという食への関心が高まっていることを感じました。あとは、思ったよりも体力のいる仕事だったことですね。毎日、腰痛との戦いです(笑)。毎朝、ストレッチを行うなど、自己メンテナンスは怠らないように心掛けています。

創業して良かったことは何ですか?

やはりお客様の笑顔が見られることですね。「おいしかったです!」「またお友達をさそって来ますね!」と言っていただけると、本当にうれしくなります。また、病院でお祝い膳を食べられた方から「おいしかったです!」とお礼の手紙が入っていたときには、涙がでそうになりました。お礼を言われると、逆に「こちらこそありがとうございます」という気持ちになりますね。

今後の目標を教えてください。

お店のファンを増やして、集客につなげていくことが課題です。お惣菜のテイクアウトなど、若いママたちのニーズにも応えて、安定して継続できる事業にするための努力をしていきたいと思っています。あとは、併設しているフリースペースの活用ですね。サークルの活動に使っていただいたり、ワークショップを定期的に開催したりできればいいなと思っています。経営が安定してきたら、心と体が満たされる、おいしくてヘルシーな社員食堂のプロデュースにも挑戦してみたいですね。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

やりたいと思ったときが吉日です。まずは専門家に相談したり、起業セミナーに出掛けたり、アクションを起こしてみるといいと思います。それから、世の中の流れやお客様の動向をつかむこと。自分の思いも大切ですが、ニーズを受け入れる姿勢も必要だと思います。想定と違っていたということが起こるかもしれませんが、必要に応じて柔軟に対応する、そのくらいのスタンスがちょうどいいのではないでしょうか。