創業者紹介
薪窯パン&Pizzaの店 大樂堂
大樂 知洋
大樂 菜穂
Tomohiro Dairaku
Naho Dairaku
広島県から移住してパン屋を創業!
薪窯で焼いたパンとピザで
地域をもっと元気にしたい。
大樂 知洋/大樂 菜穂
Tomohiro Dairaku / Naho Dairaku
知洋さんは広島県世羅郡出身、菜穂さんは広島県東広島市出身。広島県の「おへそカフェ&ベーカリー」で出会い、結婚。「自分のパン屋を開きたい」という菜穂さんの夢を叶えるために退職し、山口県岩国市に移住。2025年3月に「薪窯パン&Pizzaの店 大樂堂」をオープン予定。
薪窯パン&Pizzaの店 大樂堂
創業:2025年3月
住所:岩国市周東町祖生6357-1
HP:https://www.instagram.com/dairakudou/
これまでの経歴をお聞かせください。
知洋さん:出身は広島県です。2歳からピアノを始め、高校を卒業後は上京してピアノを弾いていました。21歳の時に家の事情で広島に戻り、福祉関連の会社に就職しました。運営している福祉施設の一つがパン屋を立ち上げることになり、外部の講師を招いてパン作りを教えてもらったのが私とパンとの出会いです。3年ほどパンに携わり、数年ごとに異動しながら約10年勤め、その間に介護福祉士と音楽療法士の資格を取りました。退職後、フリーのピアノ講師をしていましたが、レッスンは夕方からが多く、昼間の時間を持て余すように。そこで、地元の世羅町にあるパン工房「おへそカフェ&ベーカリー」でパン作りを手伝うことになりました。気がつけば10年が経ち、工場長も務めていたのですが、妻と一緒に自分たちのパン屋を開くために退職しました。
菜穂さん:私は広島県東広島市の出身です。子どもの頃から食に興味があったので大学で食品衛生学を専攻し、食品衛生資材や食品添加物を製造するメーカーに専門職として就職しました。けれども、働くうちにやっぱり自分の手で作りたいと思うようになり退職しました。それから、「将来独立したとして、女性一人でもやっていけるのはパンしかない」と考え、まずは修業にと、ちょうど募集があった岩国市のパン屋で働き始めました。ところがしばらくして閉店することが決まり、広島に帰って「おへそカフェ&ベーカリー」に就職しました。5年ほど務めた間に夫と出会い、結婚、出産し、その後、二人でパン屋を開くために退職しました。
創業を決めたきっかけを教えてください。
菜穂さん:「自分のパン屋を開く」という私の夢がきっかけです。もともと「おへそカフェ&ベーカリー」にも、独立までの修業を兼ねて入っていました。結果として工場長を引き抜くことになり、正直、申し訳なさはすごくあります。
知洋さん:ただ、オーナーは「やりたいことをするなら早い方がいいよ!」とすごく応援してくれました。今でもいろんなアドバイスをくださり、いい関係が続いています。
創業の地に岩国市を選んだ理由は?
知洋さん:夫婦二人とも親が60歳を越えていることもあり、広島だけでなく、すぐに帰ることができる岡山と山口も候補地としました。ただ、岡山はパンの激戦区で似たようなパン屋がたくさんあるし、広島は以前の職場があるし、さらに有名なパン屋も点在します。だったら、まだハード系パンの店が少ない山口かなと。
菜穂さん:私の父の実家は下松市で、母の実家は岩国市なので親近感もあったんです。それから広島と2時間以内で行き来できる岩国市か周南市に候補地を絞りました。
知洋さん:とはいえ、二人とも土地勘がありませんので、岩国市と周南市のシティプロモーション課や関連の街づくり岩国に相談し、まちを案内してもらったり、宿泊ありのお試し体験などをさせてもらいました。その中で一番ピンときたのがこの地でした。
菜穂さん:ピンときた理由は、すぐ近くに支障木で薪を作る団体があったことです。実は岡山に薪窯で焼くおいしいパン屋があって、以前から憧れがありました。ここなら自分で作った薪でパンを焼くのも夢じゃないと、この地での創業を決めました。
創業に向けてどんな準備をされましたか?
知洋さん:岩国商工会議所の「いわくに創業カレッジ」で創業について学びました。まだ広島(世羅)に住んでいたので、仕事を終えてから車で岩国市まで来て受講し、終わったら広島に帰って翌朝5時からまた仕事…、というハードな生活を送っていました。でもそのおかげで創業や経営について学べただけでなく、創業を目指す同志をはじめ中小企業診断士の先生や経営の先輩などたくさんの方々とつながることができました。
菜穂さん:それと並行して物件探しも進めました。「街づくり岩国」に相談すると、親切にあちこち連れて行ってくださり、その中で見つかったのが元蕎麦屋だったこの物件です。和風な雰囲気はあえてそのままがいいと思い、薪窯を据えたり、厨房が見える間取りに変更したり、商品棚を造作したりと和のテイストを残す改修にしていきました。
創業資金はどうされたのですか?
知洋さん:創業資金は、日本政策金融公庫と信用金庫からの融資と、(公財)やまぐち産業振興財団の「やまぐち創業補助金」を活用しました。当初は自己資金のみで創業しようと考えていましたが、岩国商工会議所の紹介やいわくに創業カレッジでつながった中小企業診断士などの専門家から、借りられるなら借りておいた方がいいこと、同じ借りるなら2つの金融機関を使った方がいいことなど、具体的かつ戦略的なアドバイスももらえ、すごく助かりました。この時にお世話になった中小企業診断士の先生には今も何かと相談させてもらっています。「やまぐち創業補助金」については街づくり岩国から情報をいただきました。
創業の準備で大変だったことは何ですか?
知洋さん:事業計画を立てるのが大変でした。まずは1回、フォーマットに沿って書いてみたんですが、初めてのことなのでどうもうまくいかず…。それを持って中小企業診断士の先生に相談に行ったら、もっと図を入れた方がいいとか、グラフや数字を入れて根拠を示した方がいいとか具体的なアドバイスをたくさんもらえ、本当にありがたかったです。そうやって教えてもらいながら何度もやり直し、ようやく完成させることができました。
菜穂さん:事業計画書に盛り込まないといけない商品の数や単価などは以前勤めていた店のものを参考にし、1日の来店数や売上などはもともとここで経営されていた蕎麦店の店主からのお話を参考にしました。実際にやってみないとわからないことを想像で書いていくので戸惑うことも多かったですが、少しずつ現実的な数字が見えてきて、やっぱり事業計画を立てることは必要だなと実感しました。
知洋さん:この時に立てた事業計画が「やまぐち創業補助金」を申請する際の提出書類にも活かされ、いろんな方に相談できて本当に良かったと思っています。
創業に向けて不安はありませんでしたか?
知洋さん:私は全く。周辺にパン屋はありますが、大樂堂が焼くハード系のパンはあまり見当たらず、ニーズが違うので競合することはないと思ったんです。逆に自分たちの好きなことがやっとできると期待感でいっぱいでした。でも、妻は違ったようです。
菜穂さん:「おへそカフェ&ベーカリー」のある世羅町はお花の観光が有名な地域で、シーズンによって売上にものすごく波があるのを見てきたので、もう不安しかなくて。でも夫のポジティブさに救われています。今は私の心配性と夫の楽観的思考がちょうどいいバランスなのかなと思うようにしています。
今後の目標についてお聞かせください。
菜穂さん:まずは自分たちが楽しめることを大切にしながら、経営の安定を図っていきたいです。事業を持続させるには、自分が楽しめていないと難しいと思います。もう一つ、できるだけ地元の素材を使ったり、薪に支障木を活用したりと、地域に循環をもたらしたり、地域の経済を活性化させたり、地域の課題を解消したりできる、地域の一助になれるパン屋になりたいです。
知洋さん:イートインスペースにピアノを設置するので音楽イベントをしたり、広い駐車場を活かしてマルシェなどもやりたいです。経営が落ち着いてきたら、次は店の近くに購入した古民家を利用して、小学生や中学生を対象に、経営や販売管理が体験できるようなイベントも開催していきたいです。農家から野菜を仕入れて、料理をして、販売して…といったように、地域で経済が回る様子を子どもたちに体験してもらうことで、地域の秘めた可能性を知ってもらいたいんです。そんなふうに地域が元気になることをどんどんやっていけたらいいなと思っています。
3月中旬のオープンが近づいています。お店について教えてください。
菜穂さん:最大の特徴は、自家製天然酵母で発酵させたパンやピザを薪窯で焼き上げて提供することです。高温で焼き上げますので、内層に水分を閉じ込めたおいしいパンやピザができあがります。自家製天然酵母には、乳酸菌をはじめ多くの種類の菌が共存しているので、小麦の成分が分解され、栄養価が高く、うまみと香りが豊かになります。生地は5種類くらい、そこから派生させて10種類くらいのパンを店頭に並べる予定です。
知洋さん:店頭での販売はもちろん、配達や委託販売、マルシェ等への出店も計画しています。店内にはイートインスペースもあり、庭園を眺めながらのんびりと味わってもらうことができます。ピザの具材には近隣の農家から規格外の野菜も仕入れ、食品ロスの削減や地域農業の活性化にも努めます。ほか、薪窯を活用したイベントも実施しますのでお楽しみに!
最後に、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。
知洋さん:商工会議所や創業セミナーなどをうまく活用し、人脈を築くことでたくさんの人に支えてもらえ、ファンになってもらえます。まずは誰かに相談するところから始めてみてください。
菜穂さん:長く続けられることを一番に考えるのが大事だと思います。私たちの場合、どちらかが体調を崩しても経営していけるような仕組みづくりを念頭に、一人で焼ける数を上限に1日の製造量を決めました。こういったことも創業セミナーなどを活用すれば教えてもらえます。ぜひ一歩を踏み出し、創業の夢を叶えてください!