創業者紹介

ボードゲーム倶楽部&声優教室ALSPIEL

結城 俊和

Toshikazu Yuki

山口県出身の声優を一人でも多く輩出したい!
ボードゲームの魅力を山口県民に広めたい!

結城 俊和47years old

Toshikazu Yuki

山口市出身。防府市の短期大学を卒業後、東京の代々木アニメーション学院声優タレント科に入学し、首席で卒業。井上和彦氏の声優教室に在籍中、「人造人間キカイダー THE ANIMATION」で声優デビュー。その後、声優、舞台俳優、声優講師として活動。コロナ禍を機にUターンし、2022年9月、「ボードゲーム倶楽部&声優教室ALSPIEL」を創業。

ボードゲーム倶楽部&声優教室ALSPIEL
創業:2022年9月(オープンは2023年1月)
住所:山口市道場門前1-3-5 オメガビル2F
HP:https://alspiel.com

声優、舞台俳優、声優講師として東京で30年近く活動してきた結城さんは、地元・山口から多くの声優を輩出したいと、山口市で声優教室を開くことを決意。2022年10月にUターンすると、声優教室と趣味で収集したボードゲームを楽しんでもらう専門店の2つを事業とする「ボードゲーム倶楽部&声優教室ALSPIEL」を創業。そんな結城さんに、創業までの道のりや今後の目標などについてお聞きしました。(取材日:2023年10月26日)

これまでの経歴をお聞かせください。

防府市の短大を卒業し、声優になるために東京の代々木アニメーション学院声優タレント科に入学しました。卒業後は声優事務所の養成所を経て、「美味しんぼ」の山岡士郎役や「NARUTO」のはたけカカシ役で知られる井上和彦氏の声優教室に入り、在籍中に「人造人間キカイダー THE ANIMATION」で声優デビューを果たしました。その後、プロダクション・エースに所属し、声優や舞台俳優として経験を積みました。

創業のきっかけを教えてください。

洋画や海外ドラマ、アニメ、CMなどいろんな仕事をいただきましたが、売れっ子じゃない限り、声優業だけでは食べていけないのが声優界の現実です。それで、業務委託契約という形ではありますが、2つの声優教室で講師業もしていました。しかし、コロナ禍となり、周りでは職種に関わらずいろんな人が失業し、私の生徒数も激減していきました。不安な日々を送る中、都内の声優学校や声優教室の正式な講師になろうかとも思いましたが、よっぽどの実績がない限り採用されるのは35歳くらいまで。私はすでに40を越していましたので、さすがに厳しいなと諦めました。自分で始めるという選択肢もあると考えた時、東京には大手の教室がたくさんあるので入り込む余地はありませんが、山口県ならばできるのではと思い立ちました。それからは徐々に「山口からプロの声優を誕生させること」が私の夢となり、声優教室創業への気持ちは高まっていきました。ただし、声優教室だけではやっていけないと思ったので、趣味で集めてきたボードゲームを楽しんでもらう専門店もやろうと決めたんです。

具体的な事業内容を教えてください。

声優教室は、日曜にレギュラークラス、水曜に平日クラスを開講しており、今後は土曜にビギナークラスも開講予定です。どれも月4回のレッスンで、少人数制かマンツーマンで行っています。「活躍するプロの声優」を育てるのが私の目標なので、一人ひとりに目が行き届かない大人数を集めての指導は行いません。また、発声や演技などプロの声優に必要な技術だけでなく、業界の仕組みや経験したからこそ分かる厳しさなども教えています。ボードゲーム専門店は、1時間500円~で私がこれまで集めてきたボードゲーム約1,200種類が自由に遊べるシステムにしています。世界各国のボードゲームがありますので、何度来ても飽きることはないと思います。

創業に向けてどのような準備をされましたか?

まず、山口県の競合相手をリサーチしました。声優教室に関しては、マンツーマンで行っている方がいらっしゃいましたが、話し方のレッスンに近い内容だったので競合ではないと判断しました。ボードーゲーム専門店については、お酒や食事に付随する形でボードゲームを楽しめる店はありましたが、ボードゲームを純粋に楽しむ店はなかったので、これも競合なしと考えました。次に着手したのが場所探しです。山口市の中心商店街のアーケードに良さそうな空き店舗があったので内見させてもらったのですが、その時に創業するなら商工会議所に相談した方がいいとアドバイスをもらいました。それから商工会議所に行き、東京・有楽町にある「やまぐち暮らし東京支援センター」で移住や創業の相談ができることを知りました。東京に戻ってから早速相談に行き、そこで初めて(公財)やまぐち産業振興財団やまぐち創業補助金の存在を知ったんです。それからはオンラインで打ち合わせし、補助金の申請書類の作成に取りかかりました。ちなみに現在の店舗は最初に検討していた場所ではありません。私が希望する条件を踏まえて商工会議所の方が探してくださり、より良い場所を見つけてくださったんです。店舗にしろ、補助金にしろ、相談しなければ得られなかった情報ばかりです。

補助金の申請書類を作成する上で大変だったことは何ですか?

事業計画を立てる上で、売上を想定するのが難しかったです。営業エリア内に同業他社があれば参考にできますが、声優教室もボードゲーム専門店も山口市には類がありません。東京にはボードゲームカフェがいくつもありますが、客層も人の動きも全く異なります。声優教室もボードゲーム専門店もメインターゲットは高校生以上とし、周囲の学校の数や生徒数、市役所や県庁の職員数、商店街の店舗や従業員数をざっと考え、1日に何人、何時間…、と推定で数字を出していき、商工会議所の方にチェックしていただきました。その他の項目についても商工会議所の方をはじめ多くの方々にサポートしてもらい、どうにか補助金をいただくことができました。

補助金の使い道を教えてください。

主に店内の設備です。声優教室についてはマイクやスピーカーなどの設備を揃え、ボードゲーム専門店についてはテーブルや椅子、ゲームを並べる棚などです。本当は補助金を活用していくつかボードゲームを補充したかったのですが、断念しました。もっと時間に余裕があったらと今も反省しています。

創業時に不安だったことは何ですか?

やっぱり収入面ですね。山口県にも声優になりたい人は絶対いると思いますが、果たして生徒になってくれるのかと不安でした。ボードゲームに関しても同じで、まずはその魅力に気づいてもらうことから始めないといけないので、すぐに売上につながるとは考えづらかったです。もし私が家族を養う立場だったら、こんな冒険はできなかったかもしれません。

現在の状況はいかがですか?

声優教室は現在9名で、日曜クラスに7名、平日クラスに2名という構成です。最大時は15名の生徒さんが入会されていましたが、仕事の都合やレッスンについてこられないといった理由から数人退会されました。しかし、中には防府市や周南市など山口市外から通ってくれている生徒さんもいて、本当に声優になりたい人に選ばれているんだなと実感しています。ボードゲーム専門店の方は、徐々に常連客が増えているという状況です。本当はこの中心商店街の方に仕事帰りに寄ってもらえたら嬉しいのですが、中にはこの店の存在をまだ知らない人も多くのいるのではと思っています。声優教室もボードゲーム専門店ももっともっと認知度を高め、集客につなげていきたいです。

創業して良かったことは何ですか?

自分の声優教室を持て、やりたいことが自由にできていること、大好きなボードゲームに常に触れ合っていられることです。そして、この店を通じていろんな人とつながれることですね。平日にボードゲーム専門店、土日に声優教室をやっているので休みはほぼありませんが、それでも毎日が充実していますし、満員電車に揺られることもなく、東京にいた頃より断然のびのびできていると感じています。

今後の目標についてお聞かせください。

声優教室についてはオープン当時から公言していますが、「声優界の松下村塾」を目指します。維新の志士を輩出した松下村塾のように、山口からしっかりと芝居のできる、実力のある生徒を声優界に送り出したいです。「最近、山口出身の声優が多いね」といった言葉を10年後に聞けたら嬉しいですね。ボードゲーム専門店については、ボードゲームを知らない人にいっぱい遊んでもらって、その楽しさを知ってもらいたいです。東京にあるボードゲームの老舗の店主さんにUターンすることを伝えた際、「ぜひ山口でボードゲームを広めてください」と言われたので、それを使命としてやっていきます。

最後に、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

「どうしてもこれがやりたい!」というものがなく、何でもいいので創業したいという場合は、ブルーオーシャン、つまり競合相手がいないものをやる方がスムーズかと思います。後は頼れるところにはしっかりと頼り、準備には可能な限り時間をかけることです。山口県は県内在住者で創業を考えている方にも、UJIターンして創業を考えている人にも、サポートが大変充実していますので、ぜひ頑張ってください!