創業者紹介
芋あんたいやき まねきねこ
山中 静子
Shizuko Yamanaka
地元の名産を使った新しいグルメで、
大好きな故郷の文化を後世につなぎたい
山中 静子74years old
Shizuko Yamanaka
周防大島町出身。46年間看護師として働き、退職後は島内のカフェで手伝いをスタート。起業家養成塾「島スクエア」のフォーラムへの参加をきっかけに、みかん・サツマイモ・「瀬戸の鯛」の3つから発想を得た「芋あん鯛焼き」を開発。2024年1月、芋あん鯛焼きが看板商品のキッチンカー「芋あんたいやき まねきねこ」を創業。
芋あんたいやき まねきねこ
創業:2024年1月
住所:周防大島町
これまでの経歴をお聞かせください。
周防大島町で生まれ、ずっとこの島内に住んでいます。46年間看護師として働き、退職後、70歳からは島内のカフェでお手伝いをしています。そのお手伝いを続けながら、2024年1月にキッチンカー「芋あんたいやき まねきねこ」を創業しました。
芋あん鯛焼きを開発されたきっかけを教えてください。
周防大島町の起業家養成塾「島スクエア」のフォーラムで、県外から参加されていた方に「周防大島にはみかん以外に何の名産があるんですか?」と質問され、私を含め参加者の誰も答えられませんでした。それがきっかけで島内のいろんな方に話を聞き、かつて周防大島の暮らしはサツマイモに支えられていたこと、そして、「芋喰い島」と呼ばれていたことを知りました。講師の方に話したところ、「みかん、サツマイモ、それに昔から瀬戸内海で言われてきた『瀬戸の鯛』をプラスし、鯛焼きにしてみたらいいんじゃない?」と言われ、作ってみようと決めました。周防大島の新しい名物を開発するだけでなく、その名物で島の名産や文化を後世に伝えていきたいと思ったんです。
芋あん鯛焼きはどのように開発されましたか?
開発には3ヵ月以上かかりました。サツマイモを使った餡作りからスタートし、途中、栄養士さんにアドバイスをもらったり、試作が完成すると試食会を開いてアンケート調査を行ったり、時には大手食品会社の研究室に問い合わせてみたり…と、とにかくいろんな方法で味や食感などの向上を目指しました。中身はサツマイモの餡とみかんの果実、それを橙の皮を練り込んだ生地で焼き上げたことで一体感が生まれ、ようやく納得のいく味が完成したときは嬉しかったですね。機材の調達などを行ってくれた島スクエアや、試食に付き合ってくださった皆さんにはとても感謝しています。
なぜキッチンカーで創業することにしたのでしょう?
お手伝いしているカフェで提供することは決めていたのですが、島の小さなカフェなので、認知度の向上が難しいと思いました。私も今年75歳になりますので、いつまで続けられるかわかりません。できるだけ早く皆さんに知ってもらうためには、いろんな場所で販売することが一番だと考えました。そこで、キッチンカーなら島内どこにでも行けると思いついたんです。
創業に向けてどのような準備をされましたか?
キッチンカーでの創業を決めたものの、困ったのは資金です。年齢も年齢なので借入は難しいだろうと悩んでいたところ、島スクエアから(公財)やまぐち産業振興財団の「やまぐち創業補助金」を利用してみてはとアドバイスをいただきました。その後、大島町商工会に相談に行き、必要書類等の説明を受けました。それと同時進行で、島内や近隣で鯛焼きを提供している店を探しては食べに行き、中身の種類や提供の仕方、どんな場所でどんなお客さんが来ているのかなどをリサーチしていきました。
補助金の申請書類を作成する上で大変だったことは何ですか?
なぜ創業したいのか、どんな事業をしたいのか、商品の魅力は何なのか…と、自分なりに文章にしてみるのですが、なかなか思うようには書けません。その都度大島町商工会の方にチェックしていただきながら、修正を重ねていきました。中でも苦戦したのは数字の部分です。1日の来店数や客単価、売上、原価、人件費など算出しなればならない項目がいっぱいあり、これに関しても大島町商工会の方にたくさん助けていただきました。もしお力を借りれなければ、提出日に間に合っていなかったと思います。
その他の創業準備で大変だったことはありましたか?
キッチンカー探しは大変でした。なかなか見つからず、本当に焦りましたね。キッチンカーが見つからないということは、それにかかる費用もわからないということ。つまり、主にキッチンカーの購入に充てるための補助金申請なのに、肝心の数字が空白という状態なのです。「これでは提出書類が完成しない…」と思っていたところ、紹介で広島県の業者に注文することができました。ただ、ここから先も結構苦労しました。想像していた仕様が難しかったり、距離がある分、意思の疎通がうまく図れなかったりして、オープン予定日に間に合うのかとヒヤヒヤしました。無事に補助金も利用でき、オープン日に間に合うように納車してもらえたので、頑張った甲斐がありました。
創業して良かったことは何ですか?
たくさんの人との出会いがあることです。創業準備の段階からいろんな人に知恵をいただき、助けてもらいました。また、さまざまな考えを知ることができたおかげで、自分の視野が広がったり、物事を柔軟に考えられるようになりと、自分自身の成長も感じます。でも何より、芋あん鯛焼きを食べたお客さんから、「おいしい!」と言ってもらえることに幸せを感じています。
今後の目標についてお聞かせください。
年齢や体力も考慮し、まずは5年間続けることを目標にしています。地域おこし協力隊の方がこの事業に賛同してくれ、私の後をお願いできることになっているので、それまでにできるだけ芋あん鯛焼きの認知度を上げておきたいです。周防大島町はどんどん移住者が増えていますし、新しい観光スポットも新しいグルメもどんどん誕生していますが、私は昔の人間ですから、やっぱり残したいのは昔からある素朴な味です。一人でも多くの方に芋あん鯛焼きを食べてもらい、「周防大島=サツマイモ」が根付くこと、「ああ、周防大島はサツマイモの産地だったんだよね」と思い浮かべてもらえること、これがその先にある目標です。
最後に、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。
1人ではできないことを忘れないのが大切です。創業にあたり、私も本当にたくさんの方に助けていただきました。助けてもらうということは、ただ単に自分の負担を減らすことだけでなく、視野を広げることにもなりますので、ぜひ協力して欲しい、知恵をもらいたいと声を出してみることをおすすめします。あとは、飲食で創業する場合、自分の味覚を信じることでしょうか。いろんな意見やアドバイスがあると思いますが、最後の最後は自分の判断でいいと思います。自分が自信の持てる味だと思えるなら、振り回されすぎないのがいいかと思います。「みんなの意見を聞く」「何かあれば相談する」、この2つができればきっとうまくいくので頑張ってください。