創業者紹介

蒲田商店
土田 由里
Yuri Tsuchida
アイデンティティの1つである
蒲田商店と観光まちづくり事業で
湯本を「楽しく住めるまち」に。

土田 由里38years old
Yuri Tsuchida
福岡県出身。奈良県の大学で建築を学び、福岡県でアンティークショップやインテリアショップを、関西でリフォーム会社や設計事務所などでの仕事を経験。その間に姫路の荒物屋「蒲田商店」と出会い、継承して3代目に。その後、3年で廃業し、長門市湯本に移住。2025年10月に湯本で新しい蒲田商店を創業。
蒲田商店
創業:2025年10月
住所:長門市深川湯本1260-1
HP:https://online.kamada-shouten.shop
これまでの経歴をお聞かせください。
出身は福岡県です。奈良県の大学で建築を学び、福岡県に戻ってアンティークショップやインテリアショップで働き、結婚を機に関西へ移住しました。関西ではリフォーム会社や設計事務所で働き、コワーキングスペースの受付も経験しました。その間にご縁があって姫路で荒物屋の「蒲田商店」を営む蒲田さんと出会い、3代目としてお店を継ぐことになりました。けれど、3年ほどで蒲田商店は廃業。そして、12年間暮らした関西を離れ、長門市湯本に移住しました。その後、2025年10月に移住地の湯本で新しい蒲田商店を創業し、現在に至ります。
どうして山口に移住されたのですか?
子育ての面を考えて、関西よりも実家に近いところに住もうと思ったからです。でも、田舎に住みたかったので福岡県に戻るつもりはありませんでした。いろんな場所でまちづくりに携わっている友人に希望する条件を伝え、紹介してもらったまちの一つが山口県の長門市、湯本温泉でした。私が友人に伝えた条件は「子どもたちがあいさつを交わす地域」というもの。湯本の子どもたちは本当によくあいさつしてくれるし、大人たちはみんな子どもの顔と名前を覚えているので、安心して子育てできると思いました。佐賀県や大分県にも足を運んで最後に訪れたのが湯本だったのですが、「ここだ!」と即決しました。
なぜ再び「蒲田商店」を創業されたのですか?
姫路の蒲田商店を廃業した時から、いつか自分の手で再び蒲田商店を創業すると決めていました。なぜなら私にとって蒲田商店は、ただのお店ではなくアイデンティティの1つだからです。それに、蒲田商店は観光まちづくりの魅力にも気づかせてくれました。お店の周辺で月に一度の朝市を企画・運営していたんですが、朝市がきっかけでその地域に初めて足を運んでくれた人がいたり、別の地域から出店してくれるお店があったりと賑わいがもたらされ、観光まちづくりの楽しさややりがいを実感しました。そういった経緯もあって。蒲田商店にはものすごく思い入れが強くて、絶対にもう1回挑戦したかったんです。
事業内容を教えてください。
事業は蒲田商店の経営と観光まちづくりの2つです。蒲田商店で取り扱うのは、「選ぶ理由がちゃんとある、長く愛せる生活道具」です。使い方次第だと思っているので、あえて「長く使える」とは言っていません。ラインナップは作家さんのもとや展示会に足を運んで、自分が実際に見て、触って、本当にいいと思えるものばかりです。姫路の蒲田商店で扱っていたものに加え、少しずつ探して増やしていっている、といったところですね。観光まちづくりの方は、湯本温泉の公共空間の利活用と運営管理を担う「長門湯本オソト活用協議会」に事業者として参加していますが、蒲田商店から見える位置にある足湯に対して私発信のアプローチも考えていく予定です。
創業にあたりどのように準備を進められましたか?
まずはこの辺りに同じような店がないか、同じ仕入れ先の店がないかなどをリサーチしました。歩ける範囲においては見当たりませんでしたし、地域の方からもないと聞きました。山口県内全域だと車で移動すればあるな、といった感じです。ただ、今はどこにいてもインターネットで買い物ができる時代ですから、品揃えでの差別化は難しいと考えていて、商品に対する知識や仕入れ先とのつながり、作家さんとのつながりなど、私自身の強みを活かすことで差別化を図ろうと思っています。まずはお客さんとしっかりコミュニケーションを図って、満足して買い物してもらうこと。そして、この店のファンになってもらいたいです。店舗は初めて湯本を訪れた時に紹介してもらったエリアマネージャーさんに相談し、いくつか物件の候補を挙げてもらった中から現在の建物に決めました。地域のキーマンとつながることはやはり大切ですね。
創業資金はどのようにして準備されましたか?
自己資金と長門市の移住支援金、(公財)やまぐち産業振興財団の「やまぐち創業補助金」を活用して準備しました。やまぐち創業補助金については、長門市の移住支援金を受けるのに「申請時において、1年以内にやまぐち創業補助金の交付決定を受けていること」という条件があり、応募することにしました。やまぐち創業補助金の使い道は主に外注費(内装工事)です。そのほか、ロゴデザインやホームページ、オンラインショップの制作費、設備の購入費に充てさせていただきました。融資を受けることなく進められてありがたかったです。
創業の準備で特に大変だったことは何ですか?
事業計画書を作成するのがとにかく大変でした。まだ姫路で蒲田商店をやっていた頃、知人に教えてもらって事業計画書を作りかけたことがあり、まずはそれをベースに当時の売上も参考にしながら作ってみました。完成した事業計画書を長門商工会議所に持って行ったところ、専門家をご紹介いただきチェックしてもらえることになりました。見てもらった結果、これが足りないあれが足りないと、支出や収入の見込みの甘さを指摘され、もっと現実的に見積もらないとダメだと言われました。その時点でやまぐち創業補助金の応募締切まで1週間でしたが、大慌てでほぼ丸々作り直しました。でも、今となってはここで見てもらえたから、突拍子もないような事業計画にはならなかったですし、現実をしっかりと受け入れることもできました。
創業後、現在の状況はいかがですか?
当初、先にオンラインショップを完成させて余裕があるうちに商品をアップしようと考えていたのですが、制作会社とのコミュニケーションがうまく図れず、実店舗のオープンより3ヵ月近く遅れての完成となりました。実は事業の柱をオンラインショップにしていたのでかなり焦っていたのですが、思いのほか実店舗に来てくださるお客さんが多くて、売上も想定よりずっと高かったので助かりました。ただ実店舗が忙しくなってしまったので、オンラインショップに商品をアップさせる時間がなく、これから少しずつ増やしていく予定です。嬉しいことに実店舗にはすでに常連さんがいるんです。最初は観光で湯本温泉に来られた方ですが、今は蒲田商店を目的に湯本に来てくれています。集客には主にインスタグラムを活用していますが、湯本温泉は地域で運営しているインスタグラムやwebサイトが充実しており、蒲田商店のこともしっかりバックアップしてもらえるので非常に心強いです。創業の地に湯本を選んで良かったと改めて実感しています。
現在のワークライフバランスはいかがですか?
12時から17時までお店を開けて、残りの時間は観光まちづくりに関するレポートや事務などの仕事、家事をする…というのが毎日のルーティンです。思っていた以上に子育てが大変で、ワークライフバランスは全く取れていない状況ですね。オープン当初は土日もお店に立っていましたが、子どもとの時間を十分に確保するために、今はアルバイトを2名雇ってお願いしています。毎日ものすごく大変ではありますが、好きな仕事ができているし、わずかですが地域に雇用を創出することもできていますので、しばらくはこのまま頑張ろうと思っています。
創業して良かったことは何ですか?
一気に知り合いが増えたことです。実店舗があるといろんな出会いがありますし、私から会いに行かなくても、ふらっと会いに来てもらえるのもすごく嬉しいです。子どもたちにしわ寄せがいってしまっているのに、意外にも学校で私がお店をやっていることを嬉しそうに話しているようで、これも創業したおかげかなと思っています。でも何より、「蒲田商店の土田です」と名乗れるのが私にとってはすごくいいことです。
今後の目標を教えてください。
蒲田商店ですと、まずはオンラインショップを充実させて売上を伸ばすこと、実店舗では展示会やワークショップなどのイベントを開催して、来店のきっかけをつくることです。それと、山口県内のお客さんは現在すでに遠方からでも来てくれていますが、もっと広範囲に認知され、わざわざ足を運びたくなるようなお店にすることです。観光まちづくり事業は、今は観光に関するアイデアを探している最中です。店舗を持っているからこそできることを、スピード感を持って、軽いフットワークでやっていけたらいいですね。最終的な目標は、2つの事業を通して、この湯本を「楽しく住めるまち」にすることです。
最後に、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。
事業計画はちゃんと立てた方がいいです。そのためには専門家にアドバイスをもらったり、創業塾や創業セミナーに参加して知識をつけることも大切です。私は姫路の経験があるからと途中まで自己流でやってしまいましたが、やっぱり専門家に相談するのが一番の近道だったと痛感しました。もう1つはwebサイトなどは相手のことをよく知ってから発注した方がいいです。これまでどんな実績があるのかはもちろんですが、うまくコミュニケーションが図れる相手かどうかも重要です。あとは「こんなことがやりたい!」と口に出して周りに伝えていくことです。発信することで、周りがいろんなところにつなげてくれますし、求めている人につながったりもします。いったん口に出してしまったらやらなきゃいけなくなっちゃう…と勇気がいるかもしれませんが、創業にはそのくらいの覚悟はいると思います。口にすることで自分の覚悟も固まっていきますので、まずは「創業したい」と周りに宣言してみてください。









