創業者紹介

訪問看護ステーション陽向

阿武 知弘

Tomohiro Anno

「もっと寄り添った看護を」。
訪問看護への熱い想いを受け
縛りなく取り組める事業所を開設。

阿武 知弘36years old

Tomohiro Anno

高校までを萩市で過ごし広島の専門学校へ進学。卒業後は、広島のシステム開発会社で就職後、広島大学で経済学を学ぶ。その後、地元萩市の病院へ入職。システム管理をしながら訪問看護について学び、やがて理想を抱くように。2016年、4名の看護師とともに「訪問看護ステーション 陽向」を設立。
 
株式会社 訪問看護ステーション陽向
創業:2016年5月 ※7月から営業開始
住所:萩市土原300番地6
HP:https://houkan-hinata.com
平成28年度萩市起業化支援補助金採択

地元萩市でのびのびと育った阿武知弘さんは、高校卒業後に広島へ。広島ではコンピューターの専門学校を卒業し、システム開発会社へ就職。その後、広島大学に進学し、経済学を学んだちょっと変わった経歴の持ち主です。広島で社会人として経験を積んでからずっと念願だった萩市にUターン。そして現在、システム開発とは全く異なる医療、介護、福祉の分野でその手腕を振るいます。そんな阿武さんに、創業のきっかけや道のり、将来の目標などをお聞きしました。

これまでの経歴を教えてください。

萩市の萩商業高校を卒業後、広島のコンピューターの専門学校へ進学し、IT関連の知識と技術を習得しました。卒業後、NEC関連のシステム開発会社へ就職後、学歴の必要性を感じて広島大学に進学。経済学部で、主に経営について学びました。当時は、将来、経営者になるなんてことは全く思ってもいませんでしたが、思わぬ形で役に立っていますね。ある日、母から「萩市の病院で、システムを担当してくれる人材を探しているけど興味はある?」との連絡をもらい、Uターンをすることにしました。いずれは地元に帰るつもりだったので、ためらいは一切ありませんでしたね。その病院でシステムに携わりながら訪問看護の仕事に触れたことが、現在の事業を立ち上げるきっかけとなりました。

システム関連ではなく、医療分野での創業を決意した理由を教えてください。

システム担当での採用だったのですが、訪問看護ステーションでの仕事も担当していました。そこで、看護師さんや他のスタッフさんと一緒に働くうちに、「利用者さまにもっとこうしてあげたい」「こうすればもっとご家族が喜ばれるのに」など、訪問看護自体に自分なりの理想を描くようになりました。実は、母も以前から同じ病院に看護師として勤めており、「病院が設けたルールの中では利用者さまにしてあげられることが限られてしまう。もっと利用者さま自身とご家族に寄り添いたい。自分たちで立ち上げようかな…。」と時々言っていたんですね。その時は冗談の範疇だと思っていたのですが、自分も実際の現場を知るにつれて同じような気持ちになっていきました。母の思いが本気だとわかったことも理由のうちではありますが、何よりも自分の中でシステムより訪問看護へと大きく気持ちが傾いたことが一番の理由ですね。

創業のためにどんな準備をされましたか?

まずは、仲間に加わってくれる看護師さんを探すところから始めました。母の声かけで、志を同じくしてくれる3人の看護師さんが見つかり、本格的な創業準備に取りかかろうとしたのですが、何から手をつけたらいいのか全くわかりませんでした。そこで活用したのがインターネットです。まずは、訪問看護事業の許認可を受けるのに必要な申請書類について調べ、仕事の合間をぬいながら少しずつ準備を進めていきました。それから事務所の確保、訪問看護に必要となるさまざまな機器や備品を揃えるための資金の準備を行いました。それら全ては、誰にも頼らずに完全に我流で進めていきました。

具体的には創業資金はどのように準備されたのですか?

半分は自己資金、残りを銀行から借入しました。借入については、本当に何の知識もありませんでした。アポイントも取らずに手ぶらで銀行を訪ねて、「お金を借りたいのですが、どうすればいいですか?」と聞いところからのスタートでしたね。すると融資担当の方が「融資を受けたいのであれば事業計画書が必要となります」と教えてくださり、そこで初めて、事業計画書の存在を知りました。それから早速、事業計画書の作成に取りかかりましたが、周りに教えてくれる人は誰もいませんでした。それに、まだ退職前だったので、病院のスタッフにももちろん相談することもできず…。結局、インターネットをフル活用してどうにか形にし、無事に融資を受けることができました。事業計画書の作成には本当に苦労しましたね。平成28年度(前期)の萩市起業化支援補助金の申請書を作成する時には、萩商工会議所に支援していただいたのですが、創業する前に、商工会議所に創業や経営、補助金についてなどの相談ができることを知っていれば…と本当に思います(笑)

創業後、現在の状況はいかがですか?

創業しておよそ2年半となりますが、多くの方のご支援のおかげで経営は順調に推移しています。創業当時は、小さい一軒家の6畳間に、いただいた大きなドア2枚を机がわりに置いて事務所として使用していましたが、スタッフも増え手狭になってきたので、2017年の年末に現在の場所に移転をしました。ご利用いただいている利用者さまも約70名に、私を含めて5名だったスタッフも現在は看護師8名、理学療法士1名、事務1名、そして私の合計11名となりました。訪問看護の経験も実績も十分にあるベテランの看護師が揃っていることで、医師やケアマネージャーからの大きな信頼を獲得できていること、そして、スタッフ同士の関係の良好さが大きな要因のように思います。利用者さまにとってどのようにするのが一番いいのかを、日々、気兼ねをすることなく意見をぶつけ合っている様子は頼もしいですね。最近は、私は事務方に徹し、現場のことは看護師たちの判断に任せるといったように、役割分担も明確になってきました。これからもスタッフ全員が、常に利用者さまとそのご家族を見つめ、より良い訪問看護ができるよう努める…創業時と変わらず志を一緒にして自分たちの理想を追い求めていきたいと思っています。

創業して良かったことはありますか?

一番良かったことは、利用者さまにしてあげられることが大幅に増えたことですね。利用者さまやご家族から「ありがとう!」と言葉をかけてもらえたときには、何事にも代えがたい大きな喜びを感じるのと同時に、責任の重大さもヒシヒシと感じています。病院に勤務している時も充実した毎日を送っていましたが、自分のやりたいことに向かってすぐに取り組める今の環境の方が、充実感も大きいですね。私だけでなく、母も、そして他のスタッフも同じように感じてもらえているとうれしいですね(笑)。

今後の目標を教えてください。

まずは経営を安定させることが第一ですが、いずれはワンストップで全てが完結できるような事業所を目指していければと思います。例えば、ケアマネージャーがいて、介護士がいて、看護師がいて、デイサービスがあって、グループホームがあって…というように、「陽向にくれば安心!」と利用者さまとご家族に思っていただけるような業態を模索していきたいですね。また、国の方針として、今後は病院の病床を削減し、在宅での療養を積極的にすすめているので、今後はさらに、私たちのような訪問看護事業所の存在価値が高まっていくと思います。できるだけ家族のそばで過ごしたいと思われる利用者さまのため、または、できるだけそばにいてほしいと願うご家族のためにも、これからもより良い訪問看護を目指して、社会のお役に立ちたいですね。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

私は、紆余曲折を経て、現在の訪問看護ステーションを創業しました。しかし、これまでの経験が無駄になっているかというと、決してそんなことはありません。商業高校では簿記を勉強し、会計についての知識を得ることができました。専門学校ではコンピューターについて学びました。パソコンやサーバ、システムについての知識とスキルを身につけたことが、病院に入職するきっかけになりました。そして大学では、経済学や経営学について学び、会社を経営するにあたっての土台を身につけることができました。システム開発会社では、ビジネスマナー、仕事に対する心構え、仕事を順序立てて行う論理的な思考、仕事の精度と効率をあげる方法を学びました。このように、これまで経験してきたこと全てが今に生かされています。無駄な経験など何もありません。すべては自分の思い、意識次第だと思います。さまざまなものを見て、触れて、感じて、考えることが大切だと思います。その経験は、きっと将来の役に立つはずです。商売するということは、誰かに何かを提供するということ。いろいろな経験を積むことは、相手のニーズを汲み取る、その土台を作ることだと思います。今までとは全く違うジャンルのものに挑戦するとしても、決してひるむ必要はありません。今までの経験が必ず力になるはずです。そして、何から手をつけていいのかわからないという方には、まずは商工会議所へご相談することをおすすめしたいですね。