創業者紹介

Gelateria Fortuna

福島 友美

Tomomi Fukushima

規格外の農産物をアップサイクル
地産地消のジェラートで
たくさんの人に幸運を運びたい!

福島 友美41years old

Tomomi Fukushima

福岡県久留米市出身。高校を卒業後、栄養士専門学校で栄養士の資格を取得。福岡や新潟、札幌で料理人としての腕を磨く。1年間、イタリアで料理修行した経験も持つ。2016年、結婚を機に夫の地元がある萩市須佐に移住。2023年5月「Gelateria Fortuna」を創業。3人の子育てをしながら開店に向けて奔走中。

Gelateria Fortuna
創業:2023年5月
住所:萩市須佐4737-2

いつか自分の店を持ちたい。夢を膨らませながら、日本各地を転々として料理人としての腕を磨いてきた福島さん。トスカーナ、ベネチア、ピエモンテなど、本場イタリアで修行した経験も持ちます。結婚を機に萩市須佐に移住した福島さんが目をつけたのは、大量に廃棄されている規格外の農産物。「地産地消のジェラートでたくさんの人に幸運を運びたい」という想いはもうすぐ実ろうとしています。現在、開店準備に追われる福島さんに、創業までの道のりや大変だったこと、これからの目標などをお聞きしました。 (取材日:2024年1月25日)

これまでの経歴を教えてください。

専門学生時代に参加したヨーロッパ研修旅行がきっかけでイタリア料理に興味がわき、いつか本場で学んでみたいと思うようになりました。そこで、福岡や長野の飲食店などで働いた後、イタリアに渡り、トスカーナ、ベネチア、ピエモンテで約1年間イタリア料理を学びました。帰国後は新潟や札幌、福岡の飲食店で料理長や店長を勤めました。転機が訪れたのは32歳のときです。当時交際していた夫の実家を訪れた際、食卓に並んだケンサキイカやウニ、アワビといった食材の豊かさにすっかり魅了されてしまったんです。料理人を志したときからいつか自分のお店を持ちたいと思っていたので、新鮮な食材が安く手に入る萩市須佐は、料理人目線でいうとワクワクでしかなくって、結婚を機に移住することにしました。

どうしてジェラート屋を開業しようと思われたのですか?

子育てをしながら、どんな店だったら実現できるだろう。考えをめぐらせていたときに思い出したのが、以前、義父が連れて行ってくれた小川地区にある平山台果樹団地です。ここは県内有数の果樹団地で、モモやナシ、ブドウ、リンゴなど、年間を通して様々な果物が生産されています。でも、残念なことに買い手がつかない規格外などの果物は大量に廃棄されているとのこと。この果物をなんとか活用できないだろうか…。思いついたのがジェラート屋でした。ジェラートなら規格外の農産物でも使えるから、地元の農家さんにとってもいいチャンスをつくれるかもしれない。それに小さな店舗で運営できるので、子育てをしながら1人でもやっていけそうだと思ったんです。早速、福岡で開催されたジェラートセミナーに参加して、ジェラート製造の基礎知識や開業までの流れなどを学び、導入するジェラートマシンを検討しました。

創業にあたってどこかに相談されましたか?

萩市ビジネスチャレンジサポートセンターHagi-Biz(はぎビズ)で、銀行と日本政策金融公庫の融資制度を紹介してもらいました。萩阿武商工会にも相談に行き、中小企業診断士に事業計画書の書き方をことこまかに教えてもらいました。

店舗はどのようにして見つけられたのですか?

移住したときからいくつかの空き家に目をつけていましたが、安全面や駐車場などの条件が合わなくて…。悩んだ末、義母の実家の隣にあった古民家を活用することにしました。ここは須佐湾大花火大会が行われる漁港の近くなので、立地的にもいいかなと思ったんです。でも、いざ事業計画を立ててみると、古民家の改修費だけで1,000万円、ジェラートマシンを含めると2,000万円にも膨れ上がってしまい、このままでは融資の審査に通らないことがわかりました。自己資金を用意する余裕がなく、借入に頼るしかなかったので、古民家×ジェラートの夢は諦めざるを得ませんでした。でも、どうにかして融資を受けてジェラート屋をオープンさせたい。すがる想いで萩阿武商工会に相談したところ、出てきたのが輸送用コンテナを利用するアイデアでした。これなら予算を抑えられるし、SNS映えしていいかも!と一気にテンションが上がり、コンテナを探すと同時に、事業計画書の練り直しに取りかかりました。

事業計画書はどのように練り直したのですか?

コンテナに変更したことで当初の予算から500万円ほど下げることができました。また、年間約5万人が訪れる「いかマルシェ」内の一角をお借りして対面販売も行い、集客アップを図ることも追加しました。ジェラートは賞味期限を表示する必要がないため、対面販売で売れ残ったものはカップ詰めしておいて、テイクアウト商品として卸販売にもまわせます。卸先としては「道の駅ゆとりパークたまがわ」や「道の駅阿武町」、須佐ホルンフェルス近くの土産店「つわぶきの館」なども計画に盛り込みました。半年がかりで計画を練り直した結果、銀行と日本政策金融公庫の融資を受けることができました。

創業にあたって何か公的な制度を活用されましたか?

融資がおりたタイミングで、萩阿武商工会から(公財)やまぐち産業振興財団「やまぐち創業補助金」を教えていただき6月に応募しました。融資を申請するために何度も書き直したおかげで、5月には事業計画書がほぼ出来上がっていたので、補助金の書式に合うように書き換えるだけで済みました。交付された補助金はジェラートマシンの購入費用の一部に充てさせていただきました。コロナ禍でマシンの値段が100万円近く高騰していたのでとても助かりました。

そのほかにも準備されたことはありますか?

福岡のジェラート専門店のほか、下関市豊北町にある「きたうらきららジェラートMamena」さんを視察しました。同じメーカーのジェラートマシンを使っていて、田舎という環境も似ている。その上、私と同じ子育て世代のママさんが開業されているので参考になるかなと思って。訪れたのは冬場でしたが、お客さんがひっきりなしに訪れていました。田舎でもこれだけ集客できているということは、私にも成功できる可能性があるかもしれないと勇気をもらいました。

創業にあたって特に大変だったことは何ですか?

事業計画書の作成です。そもそもパソコン作業が苦手なので、文字を打ち込むのですら苦痛でした(笑)。最も大変だったのは事業の見通しを数値化していく作業です。銀行と相談しながら何パターンか作成し、閑散期のことも考慮して返済できるギリギリのラインを設定しました。

創業にあたって想定外のことはありましたか?

なかなか融資が通らなかったり、古民家からコンテナに変更したり、コロナ禍でジェラートマシンの入荷が遅れたりと、想定外のことだらけでした(笑)。当初は「ジェラートといえば夏」という思いが先行していたのですが、もし夏に開店していたら補助金申請のタイミングは逃していました。周りからも「1人でするのだから、閑散期に開店して徐々に仕事に慣れていった方がいいよ」とアドバイスを受けたので、繁忙期にオープンしなくて正解だったと思います。開店まで1年間考える猶予があったので、業者さんも仕入れ先もじっくりと検討することができました。

今後の目標についてお聞かせください。

店名の「フォルトゥーナ」はイタリア語で「幸運」の意味。地元の農産物を使ったジェラートを提供することで、たくさんの人々を幸せにしたいと思っています。それに、お店を続けることで、私と同じように創業を考えているママたちの背中を押せたらいいなという想いもあります。私にとってジェラート屋はゴールではなくスタート地点。子どもが大きくなって手が離れたら、イタリア料理店も手掛けたいなと思っています。

現在、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

必要なのは「何が何でも創業したい!」という情熱だと思います。その強い想いがあったから、資金面や事業計画でつまずいても、何とか乗り越えることができました。自己資金がなかったとしても、補助金等を上手く活用することで、田舎での創業のハードルはぐっと下がると思います。様々な支援機関に相談して、創業に向けて入念な準備をして、ぜひ夢を現実のものにしてください!