創業者紹介
株式会社 たけふぁむ
東谷 まどか
Madoka Higashitani
始まりは「やってみたい! 面白そう!」。
竹パウダーの生産・販売で
竹害問題の解決を目指す。
東谷 まどか26years old
Madoka Higashitani
岩国市出身。高校を卒業後、地元企業の事務職に就いたが体調を崩し休職。休職中、母親から竹林を整備し、切り出した竹を商品にするビジネスアイデアを聞き、創業を考えるように。その後、勤めていた地元企業を退職し、両親の力も借りて、2023年10月に竹の利活用を主な事業とする「たけふぁむ」を創業。
株式会社 たけふぁむ
創業:2023年10月
住所:岩国市川西1-21-19
HP:https://takefam.com
これまでの経歴をお聞かせください。
生まれも育ちも岩国市で、自然豊かな環境で育ちました。高校を卒業後、地元の製造メーカーに就職し、6年ほど経理事務をしましたが、仕事にやりがいを見出せなかったり、人間関係で悩んだりして体調を崩し、鬱(うつ)診断を受けて休職しました。休職中、母から社会課題をビジネスで解決する事例が注目されていることを聞き、「荒れた竹林を整備して、伐り出した竹を商品に変えて利益を得るという仕組みが作れたら、竹が生えてきて困っているこの現状が解決できるんじゃない? これ、面白くない?」と言われ、「社会から厄介者扱いを受けているモノから利益を生み出す、そんなことができるのか!? 面白そう! やってみたい!」と挑戦してみることに。それから会社を辞め、私と両親で2023年10月に株式会社たけふぁむを創業しました。
事業内容を教えてください。
一言で言えば「竹の利活用」です。厄介者と言われる竹を魅力的な資源に変えて、利益を生み出しています。現在の主力商品は、牡蠣の養殖筏(いかだ)に使われる「牡蠣筏材」と、野菜や花、果樹などに使える竹の肥料「竹パウダー」です。他にも昔ながらの遊具「竹ぽっくり」、「竹あかり」、正月には「ミニ門松」なども作っています。また、「竹活体験」と称した竹林整備イベントや竹でものづくりをするワークショップなどを開催したり、場合によっては竹林整備だけを請け負うこともあります。
なぜ竹の事業で創業しようと思われたのですか?
私の実家は山を所有しており、毎年、春になるとたけのこを掘りに行くのが恒例で、子どもの頃から竹林に親しんできました。けれども近年では山奥の方までは管理が行き届かず、竹林は荒れていく一方。放置竹林は災害を引き起こす原因にもなり得、竹害問題として話題に上がることも多くなってきました。ですから母は、社会課題をビジネスで解決することを考えた時、すぐに竹林が頭に浮かんだのだと思います。母のアイデアを聞いてから、まずはインターネットで竹そのものについて調べました。すると、竹はカゴや竿といった生活用品や伝統工芸品だけでなく、タオルや肥料、脱臭炭など、加工すればいろんなことに活用できるとわかったんです。中でも一番気になったのは、野菜にも花にも果実にも穀物にもお米にも効果があるとされる竹を原料とした肥料でした。いわゆる竹パウダーです。今まで不要とされてきた竹がいろんな植物の成長を促すなんてすごいですよね。しかも利益も得られるんですから。いろんな竹の可能性を知り、面白いなと思いました。
創業にあたってどこかに相談されましたか?
相談相手は主に母でした。私の母は個人事業として書道教室を始め、現在では「和のよろこび株式会社」という会社を経営する経営者です。それにものすごいアイデアマンでもあるんです。なので、困ったことやわからないことはとりあえず母に相談していました。身近なところに創業、経営の先輩がいるのはすごく心強かったです。
創業資金はどのようにして準備されたのですか?
私と両親とで用意した自己資金と(公財)やまぐち産業振興財団の「やまぐち創業補助金」です。補助金の申請にあたり事業計画が必要でしたが、ここでも母にたくさんアドバイスをもらいました。事業計画を立てる中、一番大変だったのは資金繰り計画です。とりあえず事業に必要な費用を賄ってかつ利益を出すために必要な売上目標を出し、そこから商品の単価や販売数…といった数字を出していきました。商品の単価はインターネットでリサーチしたのですが、結構値段に幅があったのでひとまず勘に頼ることにしました。正直、思っていたよりハードルが高い売上目標だとは思いましたが、「実際にやってみないとわからない!」の精神で進んでいきました。創業に対しては不安より、ワクワク感の方が上回っていましたね。
創業にあたり、何か宣伝活動はされましたか?
インスタグラムなどSNSでの発信も試みましたが、一番効果があったのはプレスリリース(報道機関向けの発表資料)の配布です。興味を持ってくれたメディアから取材の依頼が来て、その報道を見た通販会社から問い合わせがあったりと、とてもありがたかったです。今でも事業内容を説明する時は、創業当初に取材してもらったテレビ番組の動画をまずは見てもらっています。
創業後、現在の状況はいかがですか?
おかげさまで牡蠣筏材を製造する業者との取引も順調で、定期的に竹を納めさせていただいています。竹パウダーは地元にある2つの園芸用品店に卸させていただいており、定期的に買ってくださる方も増えていっています。竹活イベントではいろんな出会いがあるんですが、中には私が鬱で休んでいた経歴を知って、同じ悩みを抱えていらっしゃる方が足を運んでくださることもあります。元気に働く私の姿を見て「励まされました!」「未来に希望が持てました!」と言葉をかけてくださることもあり、すごく意味のある活動をしているんだなと喜びを感じています。売上的にはまだまだですが、いろんな形で社会貢献ができていると実感でき、充実した日々を送っています。
今後の目標についてお聞かせください。
事業を継続させることが一番の目標です。この事業が継続すればその分美しい山が増えます。そうすると安心安全な環境が確保でき、人々の暮らしも豊かになりますから。まずは地元の岩国市で竹林に困っている人ゼロを目指して頑張りたいですね。事業継続のためには売上も上げないといけないので、竹パウダーの販路拡大も大きな目標です。現在、ホームセンターでの取扱を目指して動いています。消費者に手に取ってもらう仕掛け、梱包作業の人手確保、運送代の捻出…と、色々と課題は山積みです。それでも会社員時代とは違って、やりがいを感じつつ働けているので楽しいです。これからも挑戦し続けたいと思っています。
最後に、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。
応援してくれる人、助けてくれる人を見つけることをおすすめします。私の場合はそれが母でした。相談できる相手がいることは、大きな心の支えになるだけでなく、いろんな考えを知ることができますし、時には冷静な判断もしてもらえます。それと、人とのめぐり合わせを大切にすることも大事です。とにかくいろんな人に出会って、いろんな意見を聞いてみてください。力になってくれる人、助けてくれる人が必ずいるはずです。私はタイミングが合いませんでしたが、公的な支援機関や創業カレッジなどの活用もきっとプラスになると思います。「やってみたい!」「面白そう!」と思えることがあるなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。