創業者紹介

RANKER

大谷 裕介

Yusuke Otani

ノルマや売上を追求するのではなく、
お客様の居心地の良さ、満足度を重視する、
自分のやりたいことができる店を実現。

大谷 裕介38years old

Yusuke Otani

長門市生まれ。高校を卒業後、通信制の理美容専門学校へ進学するものの半年で自主退学。さまざまな職を転々としたあと、再び、専門学校に入り直して理容師を志す。理容師としての経験を積んだ後、船大工に転職し「ものづくり」の心を学ぶ。その後、萩の理容店で理容師に復帰。2015年、「RANKER」を創業し、現在に至る。
 
RANKER
創業:2015年2月
住所:萩市大字椿2990-1
HP:https://www.ranker-ranker.com

映画「インディー・ジョーンズ」の影響を受けて、冒険家になりたかった大谷裕介さんは、「定年まで同じことを繰り返す仕事ではなく、冒険家のような刺激ある毎日を過ごしたい」という思いから、理容師への道を進むことを決意しました。挫折をしたり、寄り道をしたり、さまざまな紆余曲折を経てたどり着いたのは「自分が理想とするサービスを提供できる理容店を開きたい!」という想いでした。そんな大谷さんに、創業までの道のりと現在の状況、今後の目標などについてお聞きしました。

これまでの経歴を教えてください。

長門市の商業高校を卒業後、通信制の理美容専門学校に入りました。高校の頭髪検査の前にクラスメイトたちの髪をよく切っていたので、周りの人たちから理容師を勧められたことがきっかけです(笑)。でも、面白さが見出せずにわずか半年で学校を辞めてしまいました。その後、コンビニやガソリンスタンドなどの職を転々としましたが、どれも一生続けたい仕事とは思えなくて…。それで結局、別の理美容専門学校に入り直すことにしました。学校を辞めて1年半、違う仕事をしながらも「もう少し続けていたら面白くなっていたのかもしれない…」という後悔が心の片隅にあったのが理由です。二度目の専門学校で国家資格を取得し、ついに理容師としての道を歩み始めましたが、ここでもまた一つ挫折を味わいました。下関や福岡のお店で働いていたのですが、売上ノルマに追われる日々が続き、好きでやっていたはずの理容師の仕事がいつの間にか楽しくなくなってしまったんです。「これはやりたかったことじゃない」と、28歳の時に退職して長門に帰ってきました。それから、今度は今までと全く違うことをやってみようと思って、船大工の仕事を3年ほど経験しました。主な仕事は、漁船の修理や解体でした。船大工として独立しようと思ったこともありますが、何も資格を持たない自分が一生の仕事にするのは難しいのかなと思い、断念しました。そこで改めて「世間にきちんと胸を張られることは何だろう?」と考えた時に、自分には理容師の国家資格がありました。その頃には、理美容の仕事に対する嫌悪感も随分薄れていたこともあって、再び理容師の道に進むことにしました。それから萩の理容店で2年ほど勤めた後、創業をして現在に至ります。

なぜ創業することにしたのですか?

萩で勤めた理容店で、幅広い年齢層のお客様の髪をカットしたことが大きな自信となったこと、そして、自分が理想とするサービスを提供したいという思いが強くなったことが、創業を決めた一番の理由です。下関や福岡で働いていたときは、売上を重視するあまり、必要のないシャンプーやスタイリング剤などを勧めるのが当たり前になってしまっていました。今思えば、お客様に喜んでいただくという商売の基本を、完全に見失っていましたね。だからこそ、お客様第一のお店を自分で開こうと思ったんです。それと、自分が引退すると決めない限り、ずっと続けられることにも魅力を感じました。

創業するためにどんな準備をされましたか?

まずは萩商工会議所と萩市役所に相談に行き、創業までの手順と創業資金について相談をしました。創業資金の借入には本当に苦労しましたね。自己資金もほとんどなく、しかも顧客ゼロからのスタートという圧倒的に不利な状況だということは理解していましたが、金融機関で門前払いされたときには、さすがに落ち込みました。商工会議所の方にも立ち会っていただきながら何度も交渉を重ねて、希望より低い金額で、しかも利率が高いプランに変更して、なんとか借入をすることができました。ただ、振り返ってみると、初めに立てていた予算は、あれもこれもとイメージばかりが先行し大きく膨らんでしまっていたように思います。借入がスムーズにいかなかったことで、結果的に、創業プランを冷静に見直す良いきっかけになりましたね。

創業してからの苦労や失敗について教えてください。

なんとか創業はできたのですが、最初はなかなか上手くいかなくて正直大変でした。創業してすぐの2月は、親戚や昔の友だちが来てくれましたが、3月は5人、4月は10人いくかいかないか…とそんな状態で、売上が本当にありませんでした。何もやることがなくて、一日中ひたすら店でSNSを更新していたこともあります。運転資金が底をつきかけた頃に、偶然に銀行の方が訪ねて来られました。自分から行くことはあっても、金融機関の方から訪ねてこられることなんてなかったので、「これはチャンス!」と、思い切って運転資金について相談してみました。すると、その方が上司に掛け合ってくださって、100万円の運転資金を借入することができました。これを生かすためには何をすればいいのかと、それはそれは真剣に考えましたね。悩み抜いた結果、宣伝広告費に使うと決めました。「お客さん、来ないな〜。なんでだろう?」って首を傾げていましたが、やっと宣伝活動を一切していなかったことに気づいたんです(笑)。まずはフライヤーを作って、仕事を終えた後、夜な夜なポスティングして歩きました。もう本当にギリギリの状態だったので、思いついたことは全部やりましたね。萩のケーブルテレビや地元のラジオ番組への出演をお願いしたり、「萩時事」という地元の新聞にも掲載をお願いしました。友人や知人に助けてもらいながら、「人が知るきっかけになるもの」全てにアプローチしました。それから、少しずつお客様が増えていきました。今、振り返ってみると、なぜ最初からやっておかなかったんだろうと思いますね(笑)。

現在の状況はいかがですか?

当初は、予約がなくてもすぐにカットできていたんですが、現在は「予約が確実」「予約優先」という感じです。おかげさまでリピーターも増えて、今では月に350人〜400人くらいのお客様にお越しいただいています。スタッフも2名増えました。一人は40代の女性です。実は彼女、現在、理容師になるために学校に通っているんです。当初はお客様へのお茶出しと会計をやってもらう予定だったのですが、以前から美容業界に興味があったと知って、「今からでも理容師を目指してみたら?」と勧めてみました。もう一人は20代の男の子です。もともとはお客様だったのですが、大学卒業後にやりたいことがないと悩んでいたところをスカウトしました。山口県はもちろん、全国的にも若い理容師は圧倒的に少なくなっています。彼が理容師として地元に残ることで、彼自身にとっても萩にとってもいいことになるのではと期待しています。また最近では、中学生や高校生が職業体験で毎年来てくれるようになり、少しずつですが地元から信頼されるようになってきていることを実感しています。

創業して良かったことはありますか?

一番良かったのは、「自分のやりたいことをやりたいようにできている」ということです。売上ノルマの達成が目的ではなく、お客様を第一に考えた経営ができていることは、本当に嬉しいですね。当店は、理容組合に加入していないので、地域性をリサーチした結果をもとに、営業時間、価格、定休日を独自に設定しています。ただし、加入していないからといって、好き勝手にやりたいことをやるというのは違うと思い、事前に萩の美容組合に経営方針についてご説明し、ご理解いただいたうえで進めさせていただきました。自分の夢を実現するには、過去や決まりごとを全否定するのではなく、きちんと尊重しながら丁寧に話をして、お互いに理解し合うことがやっぱり必要だと思います。もう一つの良かったことは、私のことを信じてついてきてくれる2人のスタッフがいるということです。自分のやりたいこともそうですが、2人の人生とか将来についても考えながら仕事ができるのは、夢があって本当に幸せなことです。また、女性の視点や年下の視点から意見がもらえ、2人のおかげで学べることもたくさんあります。特に最近、物事の捉え方や考え方の幅が広がってきたなと感じています。これからも一緒に成長していきたいですね。

今後の目標を教えてください。

山口市内にもう1店舗出したいですね。競合は多いですが、萩市よりも人口が多いのでチャンスはあると思っています。そしていずれは、看護と介護と理容が一緒になった訪問サービスを展開していきたいですね。これから萩市も山口市もどんどん過疎化・高齢化が進んでいくのできっと社会のためになりますし、たくさんの需要もあるのではと思っています。もう一つの夢はとても壮大なんですが、いつか萩市に理容の専門学校を作ることです。理容師という仕事は、AIやロボットが発達したとしても絶対に残っていく仕事だと思います。地元できちんと育成して、地元でずっと長く続けられる、そんな循環を作っていけるといいですね。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

創業までの手順や必要書類などについては、近くの商工会議所や市役所に行けば教えてもらえます。「志」という点においては、傲らないこと、真摯であること、そして初心を忘れないことです。また、「古き良き」を尊重して、頭ごなしに否定しないことも大切だと思います。新しいことに目が向いてしまい、先駆者がここまで作り上げてきたものの上で自分たちが仕事をさせていただいていることを忘れてしまいがちですが、決して感謝や尊敬の気持ちは忘れてはいけないと思います。まずはそのままやってみて、矛盾やおかしいなっていうものを感じたなら、そこから自分なりに変えていけばいいと思います。それと、地方でやっていくのであれば、地域のお祭りや清掃活動などにも積極的に参加して、地域との関わりを良好に保つ努力をすることが必要だと思います。もらってばかりだと、それはやがて「悪」になってしまいますから。両方が幸せであれる関係を構築するにはどうすればいいかを心がけて行動していくといいと思います。