創業者紹介

西日本ジビエファーム

仲村 真哉

Shinya Nakamura

狩猟の現状を知ったことから、
ジビエの加工・販売事業を創業。
目標はジビエを当たり前の食材にすること。

仲村 真哉44years old

Shinya Nakamura

山陽小野田市生まれ。県外の大学を卒業後、飲食業界やリサイクル業界で全国各地を転々とする。持病の悪化に伴いUターンした後、シカ肉の素晴らしさを知ったことでジビエ業界に転向し、2017年9月、ジビエの加工・販売を手がける西日本ジビエファームを創業。「ジビエがスーパーで当たり前に売られること」を目指し、販路拡大に力を注ぐ。
 
西日本ジビエファーム
創業:2017年9月
住所:山陽小野田市大字山川字鋳物師屋202
HP:http://wgbf.jp

長年、脂肪分の摂取を控えないと炎症の症状が悪化するクローン病を患っている仲村真哉さん。病状に合う食材を探す中で着目していた鹿肉を実際に食べてみたところ病状が改善され、自然とジビエに興味を持つようになりました。また、ちょうど同じ時期に狩猟を題材とした「ダック・コール」という小説を読んだことで、猟にも興味を持つように…。その後、捕獲された野生鳥獣の多くが廃棄されている現実を知り、有効活用するための加工・販売施設の必要性を痛感。近隣市町村に同様の施設がないことから、「だったら自分でやるしかない!」と創業することを決意しました。ジビエの普及活動、有効利用に日々力を注ぐ仲村さんに創業までの道のりと現状の課題、これからの目標などをお聞きしました。

これまでの経歴を教えてください。

大学卒業後、山口、長崎、青森、群馬…と日本全国を転々としながら、飲食店やリサイクル店で働いていましたが、持病のクローン病が悪化したのを機に、約10年前に山口県にUターンしてきました。コンピューター関連企業やリサイクル会社での勤務を経て、2017年9月に、ジビエの加工・販売を手がける「西日本ジビエファーム」を創業しました。

ジビエに興味を持つようになったきっかけは?

実は長年、難病に指定されている炎症性腸疾患のひとつ、クローン病を患っています。小腸や大腸などの消化管の粘膜に慢性の炎症や潰瘍ができる原因不明の病気で、主な症状としては、腹痛や下痢、血便、体重減少などがあります。そのため食事は、腸に負担がかからないように、低脂肪で食物繊維が少なく、低刺激なものが基本になります。低脂肪で鉄分の多い“シカ肉”が、クローン病には良いのではと思い、実際に食べてみたところ、血液中の炎症を示すCRPという値が標準値まで下がり、貧血気味だったヘモグロビン値も標準の範囲内に入るようになるなど、想像以上の効果が出ました。もちろん個人差はあると思いますが、この体質改善がきっかけとなり、ジビエに興味を持つようになりました。それと同じ頃、狩猟を題材とした「ダック・コール」という小説を読んで、狩猟にも興味を持つようになりました。妻とは「猟師になって自分で獲ったシカ肉を食べたらいいんじゃない?」と冗談を言っていましたが、本当に自分が猟師になるとは全く想像していませんでした(笑)。

どうして西日本ジビエファームを創業しようと思われたのですか?

地元の猟友会のみなさんや各市の猟師さんと話すうちに、捕獲される野生鳥獣の多くは捨てられる、もしくは埋められているという現状を知り、「自分のようにシカ肉を必要としている人はいる。ジビエを加工・販売する施設があれば、もっと有効活用できるのに…」ともどかしさでいっぱいになりました。山陽小野田市、山口県、猟友会に提案してみたのですが、残念ながら実現には至りませんでした。「だったら自分でやるしかない!」と、思いきって創業することにしました。

創業するにあたり、どんな準備をされましたか?

まずは猟友会の先輩方に相談して、事業を立ち上げることを理解していただきました。せっかく施設を作っても猟師の皆さんがジビエを持ってきてくれなければビジネスが成立しないので、ちゃんと下地を作っておきたかったんです。それから創業・経営について学ぶために、山口商工会議所が主催する山口起業カレッジに参加しました。働きながら創業準備を進めていくのは、肉体的になかなか大変でしたが、夢の実現が近づいているという喜びから、楽しみながら取り組むことができました。

起業カレッジではどのようなことを学ばれたのですか?

マーケティング戦略や財務管理の基本、事業計画の立て方など経営の要となる部分を集中的に学んだ後、実際に事業計画書も作成しました。起業カレッジに参加して一番良かったことは、自分の視点だけでは見えていなかった考え方に気づけたことです。狩猟は、猟期と駆除期に分けられるのですが、最初の事業計画では猟期のことしか想定していませんでした。しかし、起業カレッジの先生や仲間たちと話しているうちに、駆除期を稼働させていないことに気づいて、計画を大幅に修正することができました。事業計画を見直し、年間を通じた安定的な収益が見込めたことで創業がグッと現実的になり、「これならやっていけそうだ!」と思えるようになりました。

創業資金はどのように準備されたのですか?

自己資金に加え、日本政策金融公庫と地元金融機関の協調融資という形で借り入れをしました。融資の実現にあたっては、起業カレッジで作成した事業計画書が本当に役に立ちました。具体的な数字を事業計画書に落とし込んでいたおかげで、本事業の可能性を評価していただけたのだと思います。私が作った箸にも棒にもかからないような事業計画書を親身になってブラッシュアップしてくださった起業カレッジの先生には感謝しかありませんね!

施設が完成するまでに時間がかかったとお聞きしました。原因はなんでしょう?

建設許可が下りるまでに思っていたよりも時間がかかってしまい、完成したのは退職してから約1年が経過した2019年の8月でした。なかなか許可が下りない状況にはさすがに焦りましたね…。許可が下りるまでは、猟をしたり、山を歩いて猟場を研究したり、猟師仲間を手伝ったり、各地のビジネスドラフトに参加して取引先を探したりと、スムーズに事業を開始できるための下準備に力を注ぎました。また、色々な方と商談させていただく中で、飲食業界以外では、ジビエの認知度がまだまだ低いことも痛感しました。そこで「山口県よろず支援拠点」を利用してホームページを作成し、情報発信にも取り組みました。施設の完成が遅れたことで、人脈を広げられたり、猟師としての経験や知識を得ることができたりしたという点では、ある意味でラッキーだったのかもしれませんね(笑)。

施設完成後の状況はいかがですか?

猟が解禁になる11月1日に合わせてグランドオープンすることにしたのですが、経験を積むために9月ぐらいから少しずつ受け入れを始めていました。そのおかげで厚狭地区だけでも相当な数のイノシシが獲れるという現実を知ることができました。本当に毎日のようにイノシシが入ってくるんです! 近隣以外の猟師さんからもイノシシ、シカを受け入れようと計画していたのですが、実際は知り合いからの受け入れだけで手いっぱいになってしまいました。1日でシカ4頭、イノシシ2頭を解体したこともありますが、現状は3頭が限界ですね。

経営する上での課題はなんでしょう?

販路の開拓ですね。今は卸し専門のショッピングモールやWEBショップを中心に営業をしていますが、売上アップのために、そして地元へのジビエ普及のために飲食店へも販路を拡大する必要があると考えています。実は、開業当初は地元の飲食店をメインターゲットに考えていたのですが、営業してみた結果、思った以上に条件が厳しいということがわかり、方向転換せざるを得なかったんです。自分のペースをつかみ、少し余裕ができてきたら、飲食店が希望する取引形態、例えば、小ロットのご注文に対応したり、お客様のご要望する大きさにカットしたりなどの工夫をして、再度チャレンジしていきたいですね。そして、より多くのジビエを受け入れるためにも、効率化を図り、作業のスピードアップをしていきたいです。

今後の目標を教えてください。

もっともっと販路を拡大してさらに多くの解体依頼を受け入れられるようになることが目標です。そしていずれは、法人化して狩猟やジビエに興味のある若い人材を受け入れていきたいと考えています。「猟師になるなら、ジビエ業界で働きたいなら西日本ジビエファームに行けばいい!」と思ってもらえる存在になれたら嬉しいです。大きな目標としては、スーパーでもジビエが買えるようにしていきたいですね。

創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

創業しようと思い立ったら、まずは動いてみることです。親しい人に相談するとか、市や商工会議所などの窓口に相談に行ってみるとか、実際に現場に行ってみるとか、何でもいいので具体的な行動を起こしてみてください。私の場合は、猟友会の先輩方に会いに行き現状を知ったことが、ビジネスのヒントを得ることにつながりました。また現在は、起業カレッジや起業セミナーなど、創業をバックアップしてくれる体制も整っていますので、そういったものに参加してみることもおススメです。そうすることで、無理だと思っていたことも実現に向かってきっと進み始めると思います!