創業者紹介

select shop TAKUMI うさぎ屋

柳原 和則

Yanagihara Kazunori

会社員からギャラリーの経営者へ。
これまでは体験したことがない
色々な人との出会いが何よりの喜びに。

柳原 和則61years old

Yanagihara Kazunori

山陽小野田市育ちの55歳。宇部市の高校を卒業後、地元に事業所のある企業に就職し主に経理・総務を担当。東京へ転勤後は、システムのプログラミングなども手がける。定年まで後7年を残した53歳で退職し、兼ねてからの夢であったギャラリーを創業。
 
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創業:2018年1月
住所:山陽小野田市大字西高泊2004-8
HP:https://www.facebook.com/takumiusagiya/

会社員時代に目覚めた趣味が高じてギャラリーを創業した柳原和則さん。あと7年で定年を迎える53歳で退職し、新たな人生をスタートしました。現在は会社員では体験できなかったいろいろな出会いに感動を覚えながら、自分が大好きな和雑貨を販売し、充実の日々を送っています。そんな柳原さんに、創業前の準備についてや創業後に初めて体験した喜びや困難、今後の目標などをお聞きしました。

陶器やガラスなどの和雑貨に興味を持ったきっかけを教えてください。

山陽小野田市(旧小野田市)で生まれ育ち、宇部市内の高校を卒業後、地元にも事業所のある企業に就職しました。初任地は北九州市でしたが、しばらくしてから転勤で東京へ。東京のオフィスは東京駅八重洲口側のビルにありました。当時、駅前ではデパートや百貨店での催し物やギャラリーの宣伝など、美術系のチラシがよく配られていました。最初は全く興味がなかったのですが、何度も手にとって見ているうちにだんだんと焼き物や工芸品への興味が湧いてきて、いつの間にかデパートやギャラリー、美術館などを見て回るようになっていました。そうこうしているうちに結婚と同時に転勤となり、地元の山陽小野田市に帰れることになりました。そして親戚から結婚のお祝いにと愛媛県の砥部焼の器をいただきました。その器を見たとき、「こんな器があるんだ!」と衝撃を受けたのを覚えています。今思えばこの砥部焼に出会ったことがきっかけで、陶磁器や和雑貨の魅力に一気にのめり込んでいったような気がします。

趣味だった和雑貨で創業しようと思った理由をお聞かせください。

いろいろな和雑貨を見て回るうちに、いつかは自分でギャラリーを経営したい」と思うようになりました。当然まだ子どもが描く夢のようなレベルでしたが、40代半ばには、家族にもその夢について話をしていました。週末になるとあちこちの陶器市や工芸展、萩焼まつり、山口市で開催されるアーツ&クラフツなどに家族を連れ回していましたね(笑)。会社勤めをしながら休みには和雑貨を見て回る…そんな日常が当たり前になっていき、夢のレベルで考えていたギャラリー経営をだんだんと本気で考えるようになっていきました。そんなとき、勤めていた会社でもいろいろと変化があり、独立するなら今だなというタイミングが訪れました。まだ、定年まで7年もある53歳のときです。家族からは大反対されましたが、大きくなってしまっていた創業への思いを抑えることはできませんでした(笑)。ここでやらなかったら絶対に後悔すると思い、会社に退職届を提出しました。

創業のためにどんな準備をされましたか?

退職後、まずは小野田商工会議所が主催する起業セミナーなどを受講しました。経営に関しては素人で、しかもこれまでの仕事とは全く違う分野ですから。何から始めていいのかわからなかったので、とりあえず商工会議所だと。また、いろいろなセミナーを受講する一方で、仕入先の開拓も始めました。以前からいいなと思っていた作家さんに片っ端から電話やメールをしましたね。ギャラリーや雑貨屋を経営している知人もいませんでしたし、本当に手探りで進めていった感じです。それと、商工会議所から紹介された月に一度開催の創業相談にも行きました。

起業セミナーや創業相談では何を学びましたか?

開口一番、「個人事業主は売上に浮き沈みがあり、現状は非常に厳しいですよ」と言われました。その言葉を聞いて、毎月一定の給料をもらえるというのは、とてもありがたいことなんだと実感しました。強い覚悟を持っていたのですが、改めて宣告されるとやはり衝撃的でしたね。でも屈してはいられませんので、個人事業主に必要な経理や事業計画書の書き方など、いろいろなことを指導していただきました。特に、事業計画書においてはかなりシビアに突っ込まれ、何度も修正しました。会社員時代は事務方だったのでその要領で始めてみたのですが、経営となると全く経験がないため「こんなもんかな…」という感じで計算するととんでもない数字になって…。まるで雲をつかむような作業でした。税理士の先生から「柳原さん、これで大丈夫ですか。1日に何人のお客さんが来ると思いますか? そこからご自分で想定してみてください。」など、具体的な指導を細かく受けました。無事に事業計画書が完成できたのは、税理士の先生と商工会議所の担当者の方のお力があってこそです。一人では到底できませんでしたね。その後、商工会議所から金融機関を紹介いただき、完成した事業計画書を持って面接を受けた中で事業計画と開業への思いを説明しました。その結果、どうにか無事に資金を借り入れることができました。資金は主に店舗の内装工事に使いました。

創業後、現在の状況はいかがですか?

実際に開業してみて、初めて自分の甘さに気づかされましたね。実際の売れ行きは想像以上にシビアで正直苦戦しています。2018年の1月にオープンして、イベントに出店し始めたのが6月からですが、当店の未熟さもあることながら生活雑貨販売の業界全体が厳しいことを痛感しました。ですから売上は低位安定(笑)なので、費用のかかる宣伝はせず、facebookを活用したり、知人のお店にちょっとしたチラシを置いてもらったり、ポスターを貼ってもらったりと、口コミで徐々に認知度を上げています。税理士の先生からも費用対効果についても学び、「今は口コミでしっかり広め、根を生やした商売をされたらどうですか?」ともアドバイスを受けました。いずれはホームページを開設してそこでの販売もする予定ですが、今はとにかく自分でやると決めています。また、仕入れの難しさも実感しています。基本的に仕入れは買取で、委託はほんの一部です。ですから在庫を抱えすぎてしまうと回らなくなってしまいます。仕入れてから一度も売れていないものもあれば、2度、3度と再入荷しているものもあります。こればっかりは経験なので、体で覚えていくしかないですね。ただ、「うさぎ屋ならではのテイスト」は崩さないように気をつけています。7割くらいは同じようなもので、後の3割は新しいものに入れ替えて…というようにバランスを保ちながら、うち独自の色を出していきたいと思っています。

創業して良かったことはありますか?

会社員時代とはまた一味違ったいろいろな方々との出会いです。特に作家さんとの関わり方は変わりましたね。これまでの私は、お客さんという立場だったので、作家さんとはイベントなどでほんの少し話す程度でした。でも今は、「一緒に販売する仲間」という意識を持って話をするようになりました。作家さんたちは作品に対する思いをはじめさまざまなことを積極的に説明してくれますし、私は私で作品の良さや使い勝手を伝えています。視点が変わったことで絆が深まり、今までは知らなかった世界が見えてきました。「毎日仕事が楽しい!」、そう思えています。また、金銭的には厳しいですが、時間という面で見るととても自由にやらせてもらっています。会社勤めとは違い平日に動けるようになったことで、これまで妻に任せきりだった子どもの学校関連の用事などにも自主的に取り組めています。収入が少なくなった分、家族にはそこでしっかりサービスしようと心がけています(笑)。

今後の目標を教えてください。

まずは経営の安定です。覚悟を決めて創業したわけですから、大成功とはいかないまでも経営を継続できる売り上げの安定化を目指します。将来的な目標は、山陽小野田市でも山口アーツ&クラフツのような多数の作家さんを呼べるイベントを開催できればと思います。自分の店もまだまだで口に出すのはおこがましいですし、それだけの人脈もないですがいつかは叶えたいですね。山陽小野田市には現代ガラス作品のミュージアム「きららガラス未来館」がありますし、現代ガラス展も隔年で開催されます。せっかくですから文化面でももっとアピールしたいですね。スポーツだけでなくアートも素晴らしい市なんだと多くの人に知ってもらいたいです。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

同じ業種での暖簾分けのような創業でしたらノウハウは当然お持ちだと思いますが、私のようにデスクワークをしていた普通の会社員が突然経験のないビジネスをするのは大変です。自分の経験上、ある意味危険だとも思います。全く異なるビジネスを始めるなら、とにかくしっかり準備をしてください。できれば自分がやりたいと思っている業種の方や、自分がなりたいと思うモデルケースのような人がいらっしゃれば、しばらくの間その方に付いて学ばせていただくのがいいのではないかと思います。私は師匠になる方がいなかったので、税理士の先生と商工会議所の担当者の方が全てでした。たまたまマルシェなどに出店する機会を得てイベンターの方々や作家さんと親しくなり相談できる仲間ができましたが、そういった機会がない業種だとずっと手探りになってしまいます。資金的な面も含めた事前準備と予備知識をしっかり頭に入れて動くこと。これが確実な経営への一歩だと思います。