創業者紹介

MIURA

三浦 成寿

Narihisa Miura

角打ちスペースのある酒屋で
ふるさとの商店街に活気を取り戻したい!

三浦 成寿62years old

Narihisa Miura

岩国市錦町出身。地元の高校を卒業後、岩国市役所(当時は錦町役場)に就職。役所時代は、まちづくり関係のセクション(部門)に長く配属され、地域のさまざまな事業に携わる。定年まで勤め上げ、2022年3月に退職。同年12月、今度は地域の一員としてまちづくりをするため、人々が集い、交流できる角打ちのある酒販店を創業。

MIURA
創業:2022年12月
住所:岩国市錦町広瀬6707-1
HP:https://www.miuraya.jp/

岩国市錦町に生まれ、高校を卒業と同時に岩国市役所の職員として長年活躍してきた三浦さんは、2022年3月に定年を迎え、退職。その後、「地域に交流する場所を作りたい」と、角打ちのある酒販店「MIURA」を創業しました。三浦さんが酒販店を創業した理由や創業までの道のり、これからの目標などについてお聞きしました。(取材日:2023年10月30日)

これまでの経歴をお聞かせください。

岩国市錦町に生まれ、地元の高校を卒業してすぐに錦町役場(平成18年の合併後は岩国市役所)の職員になりました。それからずっと役所に勤め、60歳になった2022年3月に定年退職しました。その後、錦町の広瀬商店街に角打ちのある酒販店「MIURA」を創業し、現在に至ります。

創業したきっかけ・理由を教えてください。

昔から母が酒の小売をやっていて、若い頃からいつか継げるといいなと考えていました。でも、当初は角打ちの構想はありませんでした。角打ちを作ったのは、地域の交流の場を作るという新たな夢も加わったからです。この新たな夢ができたのは、長年の役所勤めの経験からです。まちづくり関係のセクション(部門)に長くおり、地域の方々を巻き込みながらいろんな事業を手がけ、退職後、今度は地域の一員となってまちづくりがしたいと思うようになりました。それで、どうしても地域の方々とコミュニケーションを図る場所が欲しかったんです。ただ単に酒を販売するだけでは人を呼び込むのは難しい。そこで、飲んで語らえる角打ちがあれば、きっと集まってもらえると考えました。現在の場所を選んだのは、商店街の賑わいづくりの一役を担いたいという思いからです。

具体的な事業内容を教えてください。

岩国市にある5蔵全てを含む日本酒30銘柄、焼酎15銘柄、ワイン30銘柄、ビールなどを店頭で販売し、配達も行っています。角打ちコーナーでは、棚に並んだ日替わりの日本酒20~25種類を1杯160円~試飲でき、気に入ったものが見つかれば瓶でご購入いただいているほか、乾き物や缶詰も販売しています。店を開くのは月・金~日曜の13時~19時で、マイペースにやらせてもらっています。

創業に向けてどのような準備をされましたか?

店舗探しは役所を退職する前から少しずつ始めていました。昔は人通りが多く、祭りの日なんかは肩がぶつかっていた商店街ですが、今は空き店舗だらけ。でも、店はやってないけれど住んでおられたり、誰もいないけどまだ貸したり、手放したりはできないと断られたり…と、かなり難航しましたね。いろんな人に聞いて回り、いろんな人の力を借りてと、店舗探しは創業の準備の中で一番大変だったと思います。ようやく見つかったのが以前はお米屋さんだった今の店舗で、雰囲気のあるカウンターや最近では珍しいコンクリート張りの床などはそのまま使わせてもらっています。他は酒の仕入れ先の確保にも苦労しました。特に山口県内は小さな酒蔵が多く、そもそも製造する量が少ないので、小売店の新規参入は非常に難しいんです。でも山口県にはおいしい酒がたくさんありますから、今後も諦めずアタックしていきたいです。

創業塾などは参加されましたか?

岩国商工会議所が主催する「いわくに創業カレッジ」に参加しました。経営戦略の立て方やマーケティングの方法、事業計画書の作り方など基礎から応用までしっかり教えてくれました。学ぶ中で最も痛感したのは、自分の資金計画の甘さです。リタイア後の商売なので小遣い程度の売上があればいいと簡単に考えていましたが、具体的に数字が並ぶとさすがに危機感を覚えました。それと、酒の販売はかなりの本数を売らないと、利益を出すのが難しいことも改めて認識しました。けれど、リサーチの結果、錦町で酒が購入できるのはスーパーしかないので、厳選された酒が並ぶ専門店なら差別化は図れると判断し、そこに賭けてみようと決めました。

補助金の申請書類を作成する上で大変だったことは何ですか?

補助金は、(公財)やまぐち産業振興財団「やまぐち創業補助金」岩国市創業支援補助金を活用しました。提出書類は、提出前に「いわくに創業カレッジ」の講師や商工会議所の担当者にチェックしていただきました。さすがに一発OKとはならず、アドバイスのもと何度か作り直しました。指摘されたのはやはり資金面です。1日の来店数や売上本数、ECサイトでの売上などをより具体的に設定する作業の中で、経営者としての自覚がますます湧いていくのがわかりました。同時に、第三者の客観的な視点で見てもらうことは必要だと感じました。

補助金の使い道を教えてください。

補助金は、主に店舗の改装費と冷蔵庫など設備の購入費、宣伝広告費に活用しました。補助金をいただけたことは本当にありがたかったです。実は、商品とする酒の購入費が思った以上に大きかったんです。ある程度商品が揃っていないと商売が始められないので、酒の購入費は絶対に削れませんでした。全体の割合としては、自己資金が6割、補助金が4割くらいです。

現在の状況はいかがですか?

収入面の不安はありましたが、初月以外は今のところマイナスの月はありません。ずっとプラスで経営できているので、まずまず順調といったところではないでしょうか。昼は主に鉄道が目的の観光客が、夕方からは地元の方々が来てくれ、おいしい酒を飲み、情報を交換し、わいわい楽しんでくれています。宣伝活動はほぼしておらず、口コミで徐々に広がっているようです。最も活用しているのはLINEで、最近登録者が170人を超えました。

創業して良かったことは何ですか?

自由な時間が多くなったこと、そしてプレッシャーがないことです。すごく健康的な暮らしを送っています。でも実はこの「MIURA」の店主の他に、地域経営会社の「株式会社スマイルにしき」の代表取締役と、地域づくり法人の「特定非営利活動法人ほっとにしき」の理事長も務めており、忙しいのは忙しいんです。ただ、ずっとやりたかった「地域の一員としてのまちづくり」ができ、毎日がとても充実しています。唯一、地域のイベントが店の営業日と重なってしまうのが悩みどころです。とても幸せな悩みなんですけどね(笑)。

今後の目標についてお聞かせください。

岩国市の5蔵の酒が揃うことや、配達ができることをもっとPRして、よりたくさんの人に足を運んでもらい、利用してもらいたいです。また、地域のいろんな方々ともっとつながり、まちの未来について語り合い、面白いことを企画したいです。いずれはここで酒まつりを開催したいと思っています。この商店街にたくさんの人を呼び込み、昔のような活気が取り戻せたら言うことはありません。ただ、定年後に始めた商売なので、続けられても5~10年かな、という思いもあります。でもその間に思いっきりまちづくりに取り組みたいです。

最後に、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

人とのつながりを大切にすることが一番だと思います。店舗探し、補助金申請、商品の仕入れなど、私はたくさんの人の力を借りて、どうにかやってきました。長年役所で頑張ってきたからこそ、信頼してもらえ、応援してもらえているのだと実感しています。まずは周りの人たちに相談し、その熱意を伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。きっと応援してくれる人が見つかるはずです。