創業者紹介

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花元 貴弘

Takahiro Hamamoto

創業したからこそ叶えられた
長年理想としてきた接客スタイル。
どんどん広がる人との繋がりにも喜びが。

花元 貴弘43years old

Takahiro Hamamoto

周防大島町出身。大阪の美容専門学校を卒業後、Uターンして山口のヘアサロンに就職。15年の経験を積んだのち、2016年に自分の店を持つために独立。長年構想してきた「一人ひとりに丁寧に向き合う接客スタイル」を実現している。
 
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創業:2016年1月
住所:柳井市中央2-16-11
HP:なし

条件の良い物件が見つかったのをきっかけに、15年勤めた大型の美容院を退職して、自分のお店を構えることにした花元貴弘さん。「一対一でお客様ときちんと向き合える、接客を重視した美容院」という長年抱いてきた夢を実現させ、自分らしく伸び伸びと働いていらっしゃいます。そんな花元さんに、美容師を目指した理由と創業に至るまでの経緯、創業までの準備や現在の状況、これからの目標などをお聞きしました。

美容師を目指したきっかけを教えてください。

柳井市の工業高校を卒業後、大阪のコンピューター専門学校に進学しました。でも、自分には向いていないことに気がついて、途中で辞めてしまいました。周りのみんなが当たり前のように理系の学校へ進学したり、工業系の企業に就職したりしていたので、自分も何となくその流れで選んでしまったのがいけなかったですね。その後、一般の企業に入社してお金を貯めて、大阪の美容専門学校の夜間部に入学しました。美容の道を選んだ理由は、高校時代の頭髪検査にあります。検査前にみんなの髪をトイレで切っていて、「なかなかセンスがいい!」「上手い、上手い!」って褒められていたんです。上手い具合におだてて、切ってもらいたかっただけなんでしょうけどね(笑)。美容師になりたいという思いは、当時から心のどこかにあったんだと思います。

創業するまでの経歴をお聞かせください。

昼間は美容院で働きながら、およそ2年半で国家資格を取得しました。大阪に不慣れだったので、お客様との会話には本当に苦労しました…。そこで、このまま大阪で働き続けた方がいいのか、それとも地元に戻った方がいいのか、専門学校の先生に相談をしてみました。すると「関西でやるのも地方でやるのも美容業界はどこも変わらない。自分にとって整った環境を選ぶのが一番いい」とのアドバイスをいただき、Uターンすることを決めました。柳井市に戻ってきてからは、約15年間、地元の大きな美容院で働いて、接客や売上に対する考え方など、いろいろなことを身につけました。独立するきっかけは、偶然にいい物件が見つかったからです。そこは、もともと美容院で、鏡や椅子、シャンプー台など、ある程度の設備が整っていました。そろそろ自分のお店を構えたいなと思っていたので、突然現れたこのチャンスを逃すわけにはいかないと、思い切って挑戦することに決めました。

創業前にどのような準備をされましたか?

初めてのことなので何から始めたらいいのか全くわかりませんでしたが、前の職場のお客様から「創業するなら商工会議所に相談を」と教えてもらっていたので、まずは柳井商工会議所に行きました。そして担当の方から何の手続きが必要なのか、そのためにはどんな書類が必要になるのかなど、創業までの流れを教えてもらいました。設備を揃えてカットやカラーができる状態があればすぐにでも開業できると思っていましたが、そんなわけないですよね(笑)。創業資金の借入、そのための事業計画書作り、保健所への申請、美容機器の手配、今後お取り引きさせていただくディーラーの選定など、やることはそれはもう盛りだくさんでした。貸店舗がたまたま見つかったことで一気に創業へと動き始めたので、準備期間もあまり長くなくて。しかも前の職場に在籍したまま進めることになってしまって…。今思えばオープンの日をもっと遅らせれば良かったなと思います(笑)。けれど、「オープンしたら絶対行くね!」と声をかけてくださるお客様もいらっしゃったので、できるだけ早くオープンさせないとと思っていました。

創業前に一番苦労されたことは何ですか?

事業計画書の作成ですね。まず、どんなものかがわからない。教えてもらったら、今度は何を書けばいいのかわからくて…。商工会議所の担当者に教えてもらいながら、カットするのに何分かかって、シャンプーチェアが何台あって、それだったら1日に何人…という風に想像しながら数字を出していきました。その他には、保健所のチェックが想像以上に厳しかったですね。天井から床までの高さは何センチいるとか、施術スペースと待合所は仕切られていないといけないとか…。保健所の方に来ていただいては、足りない部品や配置変更の指示を受けて改善、そしてまた来ていただいて指導を受けて…とこれを何度か繰り返しました。オープン日の直前に年末年始のお休みを挟んだので本当にドタバタでした。この辺りも本来ならばしっかりと時間を取って、段階を踏んで準備を進めていればさほど問題はなかったのかなと思います。大きな反省点ですね(笑)。

創業資金はどうされたのですか?

自己資金が20%、金融機関からの借入が80%です。突然の創業だったので自己資金を準備する余裕もなくて、借入に頼るしかありませんでした。商工会議所の個別相談をフルに活用して事業計画書を完成させ、しかも金融機関までご紹介いただいて本当に何から何までお世話になりっぱなしでした(笑)。今でもことあるごとに相談に行かせていただいています。

創業後、現在の状況はいかがですか?

開店当初から割と順調で、事業計画書に書いた売上目標とほぼ変わらない数字でずっときています。日によってバラつきはありますが、月に100人弱くらいにご利用いただいています。本当にありがたいですね。準備期間が短かく十分に事前告知ができなかったので、オープン当初は地元のクーポン誌に広告を出しました。「これで来てくれればラッキー!」というくらいの軽い気持ちだったのですが、蓋を開けるとビックリで! 想像をはるかに超えるお客様が来店してくださいました。しかも、かなり多くのお客様がリピーターになってくださって…。1年半くらい広告を継続したのですが、だんだんと一人で対応していくのが難しくなり、お断りさせていただくことも多くなってきたので、現在は掲載を中止しています。今はリピーターになってくださったお客様一人ひとりへのさらなるサービス向上を目指し、そこから友人や家族をご紹介という風に、口コミで知っていただければいいのかなと思っています。

創業して良かったことはありますか?

自分がずっと理想としていた接客ができていることですね。あくまでサービスを重視し、お客様一人ひとりとちゃんと向き合い、ずっと繋がっていけるような関係性を築くというような。お客様と会話が弾み、いろんなことを教えてもらえ、教えてもらった話題でまた別のお客様と盛り上がったり…。楽しいひと時が過ごせるうえに、キレイになった髪を見て喜んでくださるお客様のお顔を見ることもできるなんて、すごい幸せだって思うんです。美容師という仕事は天職だと改めて実感しています(笑)。独立する前に勤めていた美容院は、売上優先みたいな感じもあって、自分がやりたいことと何か違うなっていう思いがずっとありました。ただ自分も経営者になって初めてたくさんのスタッフを雇用するには数字にシビアになるのは当たり前のことだということに気づきました。そしてそのスタッフの一員だった私は、数字を求められる中でも最上のサービスを提供するためにもっともっと努力しなければならなかったのだなということにも。さまざまなことを学ばせていただいたその経験があるからこそ、いろいろなお客様と分かり合えることができているんだと思います。今はただただ、学ばせていただいた15年間に感謝しています。

今後の目標を教えてください。

今は来てくださっているお客様を大切にしたいという思いだけですね。店舗を大きくしたいとか、何十人もいる大きな美容室をつくろうとか、そういう大きな目標はありません。数字に追われすぎて、接客をおろそかになってしまうのが嫌なんですよね…。なので、今くらいの売上をキープしつつ、一人ひとりと丁寧に向き合いながらやっていきたいと思っています。細い階段を上がってたどり着く、隠れ家みたいなこの空間が本当に気に入っています。ただ、常連のお客様が引っ越しされたり、年をとられたりして来られなくなってしまうケースは少なからずあるので、いずれは、新しいお客様を開拓するための対策を何かしないといけないでしょうね。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

「本当に食べていけるのか?」「家族を支えていけるのか?」と、創業するのに不安はつきものです。ただ、人生は一度きりなので、心残りがないように挑戦してみるべきだと私は思います。たとえ失敗したとしても、マイナスになることは絶対なくて、自分の経験値になることは間違いないです。私自身はもうちょっと早く創業していればよかったなと思うくらいです。最初は万が一ダメだったとしても、国家資格があるからまたどこかで働けばいいって思っていましたが、今はもうどこかに勤めるというのは無理な気がします。こんなに伸び伸びやらせてもらってますから(笑)。これも創業して初めてわかった感覚で、最初の一歩が踏み出せなかったらきっとわからなかったことです。せっかくやりたいことがあるなら、思い切って始めてみることをお勧めします。人間的にも成長できるチャンスだと思うので、ぜひ頑張ってください。