創業者紹介
おしゃべりカフェ うさぎ
石井 一恵
Kazue Ishii
高齢者の健康寿命を延ばしたい!
約40年の看護師経験を活かし、
認知症予防のための「通いの場」を創業。
石井 一恵60years old
Kazue Ishii
長門市出身。40年近く看護師として医療現場に身を投じ、その後、週に1回、認知症予防のための「通いの場」をボランティアで開催。約3年後、高齢者がいつでも集える場所をつくるために「おしゃべりカフェ うさぎ」をオープン。長門市民の健康を支える施設を目指す。
おしゃべりカフェ うさぎ
創業:2020年8月
住所:長門市東深川991-13
HP:https://cafeteria-1286.business.site
これまでの経歴を教えてください。
高校を卒業後、地元の産婦人科クリニックで働きながら准看護師の資格を取得しました。24歳で一旦退職し、2年間看護学校へ通って正看護師の資格を取得した後、元の職場に復帰して約30年勤めました。その後、認知症治療を行う病院で5年ほど働き、2020年8月に「おしゃべりカフェ うさぎ」をオープンしました。
なぜ創業しようと思われたのですか?
認知症の患者さまたちと触れ合ううちに、これからは認知症患者のサポートだけでなく、認知症予防も含めた高齢者の健康寿命を伸ばすことが大切だと考えるようになっていきました。それで、(一社)きらめき認知症トレーナー協会の「きらめき認知症シスター」として、長門市内のショッピングセンターの一角を借りて、週に1回、高齢者が集まっておしゃべりをしたり、手を動かしたりする「通いの場」をボランティアで始めました。「通いの場」を続けているうちに、週に1回ではなく、「いつでも」集まれる場所を作りたいと思うようになっていきました。
「ながと起業塾」に3回参加されたとお聞きしました。
1回目に参加したのは「通いの場」を始めてしばらくしてからのことです。事業計画書まで作ったのですが、どうしても覚悟ができず、実現には至りませんでした。今度こそはと翌年も参加しましたが、やはり最後の一歩が踏み出せませんでした。そうこうしているうちに、「通いの場」で使っていたショッピングセンターの閉店が決まってしまい…。場所を移して継続することも考えましたが、「きっとこれは転機に違いない!」と自分を奮い立たせ、3回目の起業塾に参加することにしました。
事業計画書を作成する上で何が一番大変でしたか?
元々数字に弱いこともあって、事業計画書の作成にはとても苦労しました。一番大変だったのは「どのようにして収益を得るか」という部分です。当初は、ボランティアでやっていたことを有料化することにかなり抵抗がありましたね。それで、新たにマッサージの資格を取得し、その施術代で運営できないだろうかと考えました。しかし、何回計算してみても、それでは経営が成り立たないことがわかって…。最終的には月会費と食事の提供で収益を得ることにしました。
創業資金はどのようにして準備されましたか?
自己資金と長門市創業支援事業の補助金、そして金融機関からの借入です。長門商工会議所の起業塾で事業計画を作っていたので、スムーズに進めることができました。主に車椅子でも入れる広いトイレやお風呂等の設備工事費として使用しました。 以前、訪問入浴を利用されている方から「長門市の飲食店には車椅子で利用できるトイレがない」ということを聞いて、「私が絶対に作ってあげる!」と約束をしていました。オープン後、その方が実際に来られて、ここでのひと時を楽しんで帰られたときは、約束を果たせた嬉しさと同時に達成感がありました。 認知症の方も障害のある方も健康な方も、みんなが集える場所にしていきたいと夢は広がり続けています。
創業されてこれまでの状況はいかがですか?
当初の計画では、利用者さんからの利用料金と食事の提供で収益を得る予定でしたが、オープン後まもなくして新型コロナウイルス感染症が流行りだして…。以前の「通いの場」の利用者さんは引き続き通ってくださいましたが、食事に来られるお客さんはほぼゼロという状況になりました。期待していた食事での収益が見込めなくなったので、急遽、お弁当の宅配サービスを始めることにしました。幸いにも近くに市役所や公民館、商工会議所があるので、まとまった注文をいただくことができています。
現在のワークライフバランスは?
もうほとんど仕事に費やしています(笑)。朝8時にはここに来て調理をスタートし、お弁当が完成したら配達に行きます。昼からは、利用者さんと一緒に体操をしたり、トランプをしたりと認知症予防のための取り組みを行います。閉店後は片付けをして翌日の準備、夜は寝る前まで翌日以降の献立のことで頭がいっぱいです。土日祝をお休みとしていますが、1週間分の食材の仕入れ等でバタバタするので、正直、あまりゆっくりはできていませんね。それでも続けていこうと思えるのは、自分のやりたいことができるようになったという喜びだと思います。また、栄養士の友だちが大体の献立を考えてくれたり、数字が得意な友だちが経理を手伝ってくれたり、長門商工会議所の経営指導員が相談に乗ってくれたりと、支えてもらっているたくさんの人の期待に応えたいという想いもあります。
今後の展望を教えてください。
まずは会員数を増やして、経営を安定させることです。将来的にはスタッフを増やし、調理や配達、経理などをお任せして、健康チェックや健康指導など、本来やりたかった認知症予防につながる取り組みに集中していければと考えています。とにかく今はできることを地道に続けていき、将来的には長門市民の健康を支える施設となり、長門市を元気なまちにしていければと思っています。
最後に、現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。
「私は◯◯をする!」と夢や目標を周囲に伝えることから始めるといいと思います。そうすることで、応援してくれる人や、協力してくれる人がきっと現れます。あとは、起業塾に参加してみることもおすすめです。私は3回通ったことで、ぼんやりとしていた事業計画がブラッシュアップされていきました。なので、納得のいく事業計画ができるまでは、何回でも通ったらいいと思います。夢が実現できるまで諦めないことが大切です!