創業者紹介

居酒屋まさき

正木 博昭

Hiroaki Masaki

偶然訪れたチャンスを受けて、
夫婦二人の理想のお店をオープン。
お客様が集う憩いの場所を目指す。

正木 博昭63years old

Hiroaki Masaki

周南市出身。地元の工業高校を卒業後、料理の道へ。ホテルや割烹料理店、社員食堂などで料理人として約39年間経験を積んだ後、現在営んでいる「居酒屋まさき」を創業。奥様と夫婦二人で店を切り盛りしながら充実の日々を送る。
 
居酒屋まさき
創業:2017年1月
住所:下松市駅南1-2-11-C
HP:なし

高校を卒業してから約39年間、ホテルの厨房や割烹料理店で料理の腕を磨いた正木博昭さんは、偶然が重なったことから「自分のお店を持つ」という夢を急遽実現することになりました。以前勤めていたお店のお客様や新規のお客様、昔からの友人・知人が集う、笑顔の絶えないアットホームな「居酒屋まさき」は、今やみんなにとって「帰ってきたくなるお店」に。奥様と二人で生き生きとお店を営む正木さんに、創業を決意したきっかけ、創業までの道のりと現在の状況、これからの目標などをお聞きしました。

これまでの経歴と創業のきっかけを教えてください。

下松市の高校を卒業後、料理の道へと進みました。工業高校だったのですが、昔から料理が好きだったので迷うことなくこの道を選びました。フードサービスを手がける会社やホテルの厨房、割烹料理店などいくつかの職場を点々としながら、約39年間、料理の腕を磨いてきました。いつかは自分のお店を持ちたいなとは思っていましたが、なかなかこれといったタイミングは訪れませんでした。ところが、37歳の頃から約20年勤めていた和食店が建物の老朽化で閉店することになってしまって…。それがきっかけで、57歳の時に一気に創業へと舵を切ることになりました。子どもも成長してすでに手を離れていたので、夫婦二人で食べていけるくらいの小さなお店でもやっていこうかと。いろんなことが偶然に重なって訪れたチャンスでしたね。

創業のためにどのような準備をされましたか?

まずは金策に走りましたね。前々から計画していた創業ではなく、突然現実として動き始めた創業だったので、自己資金はほとんど貯めていませんでした。かつての同僚が何人かすでに自分の店を開いていたので、どこの金融機関がいいとか、どんな準備が必要とか、いろいろとアドバイスをしてくれました。ある程度の概要をつかんだ後、具体的な手順や必要な書類については全てインターネットで調べました。事業計画書にしても全てインターネットで調べ、自分で一から作成しました。そのまま金融機関に提出しましたが、一発OKで無事創業資金を借入することができました。借入したお金は、調理器具や備品の購入、貸店舗のトイレや床などの改修に使いました。店舗もインターネットで探しました。いくつか候補があったのですが、以前の職場が近いところ、夫婦二人でやっていけるくらいの広さなどさまざまなことを考慮した結果、現在の場所になりました。材料の仕入先などはこれまでの経験もありますし、仲間たちに安いお店や会社を教えてもらったりしたので、特に問題はありませんでしたね。

創業前の準備で苦戦されたことはありますか?

厨房の配置に関しては大変でした。もともとがそんなに大きな店舗ではないので、冷蔵庫などの電化製品は倉庫に配置する計画でいました。ところが保健所の方が検査に来られたときになって初めて、全て厨房に置かないといけないことがわかりまして…。検査に来ていただいたのがオープンの3日前。すでに、プレオープンとしてお客様をご招待していたこともあり、指摘を受けたその場で一人で冷蔵庫を抱えて移動しました(笑)。保健所の方も事情を察してくださって、すぐに手続きをしてくださって、どうにかこうにかオープンに間に合わすことができました。

創業塾や創業セミナーなどには参加されましたか?

一度だけ、下松商工会議所が主催する創業セミナーに参加しました。その時は、売上に対する仕入の割合など、経営に関するさまざまなことについて学ばせていただきました。下松商工会議所には、帳簿のつけ方や確定申告など、経理面では特にお世話になっています。いくらインターネットでいろんなことがわかるといっても、経理に関してはそれぞれケースが異なるので、やっぱり専門の方に見てもらうのが一番だと思います。初めての確定申告を無事に乗り切ることができたのは、下松商工会議所の方にきちんとチェックしていただいたおかげです(笑)。

実際に創業してみて、大変だったことや苦労はありましたか?

自分一人でやっていこうと思って始めましたが、こんな小さなお店でも結構大変で…。注文を聞いて、飲み物を出して、調理して、料理を出して、計算して…ってやっていると、とてもじゃないけど手が回らないんですね。開店した当初は、妻が仕事を終えた後、21時くらいから手伝いに来てくれてはいたのですが、それでもやっぱり大変でした。お客様からは「いつも怖い顔をしてる」と言われる始末でした(笑)。現在は、妻と二人でやっていて、やっとペースが掴めてきたな、というところですね。

現在の集客数や売り上げについてはいかがですか?

創業前の計画よりも若干下回りますが、二人が生活していく分には何の問題もありません。ただ、もう少しで計画の数字に届くので、もう少し頑張らなければとは思っています。借入の返済などを考慮すると、やはりできるだけ余裕があった方がいいですから。だけど開店以来、ありがたいことに、お客様がゼロという日はないんですよ。雪が降ろうが雨が降ろうがどなたかが来てくださって。毎日誰かしらに来ていただけていることには本当に感謝していますね。

集客のために何か工夫はされているのですか?

基本的に宣伝広告費はかけないことにしています。なので、自分から広告を出したことはありませんね。ガンガン新規開拓をしようというよりも、どちらかというとこれまでのお客様を大切にしながらやっていきたいという思いの方が強いですね。もちろん、突然ふらっと来てくださる新規のお客様も大歓迎です(笑)。 同業者や知人が集客についてアドバイスしてくれることもあるのですが、どうも自分たちの方針には合わなくて…。それよりも、お客様と一緒に花見や忘年会などのイベントをしたり、みんなで一緒にビアガーデンに行ったりして、親睦を深めつつ、そのご家族やお友達、知人へとどんどん輪が広がって、自然と集まっていただけるようなお店になったらいいなと思っています。

創業して良かったことはありますか?

精神的に随分と楽になったことでしょうか。具体的には、自分がおいしいと思う食材を好きなように調理することはとても楽しくて、全くストレスがありません。私はわがままなので、自分がおいしいと思ったものしか出したくないので(笑)。もう一つは時間的な自由ですね。例えば近くの会社で社内イベントがあった後、「14時から行っていい?」なんて言ってこられた場合、営業時間前でもお店を開けることができます。それは閉店時間にも言えることで、今日はお客様が途切れたから21時で閉店しようか、なんてこともできます。勤務時間の長さは勤めていた頃と今とではあまり変わらないように感じます。だけど、自由に過ごせる時間は今の方が圧倒的に多いので、気持ち的には今の方が絶対いいですね。それと、もう何十年も会うことがなかった同級生たちが集まるきっかけになったのも良かったことの一つです。「このお店がなかったら再会できなかった」って言われるたびに喜びが込み上げてきますね。みんなにとっていつまでも大切な場所でいられるよう、頑張ってこの店を守り続けたいです。

今後の目標を教えてください。

今は売上アップを目指して、とりあえず経営を安定させることです。お店の雰囲気自体はものすごくいいので、この状態を崩すことなく、「帰ってきたくなるお店」とでもいいましょうか、このアットホームな感じをずっと継続していければと思っています。なので、もっと店を大きくしたいとか、従業員を増やして多店舗展開したいとかは全く考えていません。実際に「もっと大きな場所でやってみないか?」というお声をいただいたこともありますが、お断りさせていただきました。本当にありがたいお話でしたが、創業したときと変わらず、「夫婦二人が食べていけるお店」が、私たちが理想とするスタイルです。現状よりちょっと売上アップで、さらにそれを維持していくことが目標ですね(笑)。もう一つは、お客様からアドバイスいただいた、「ここでしか食べられないメニュー」の開発です。インスタ映えするメニューなどで、若いお客様にももっと来ていただけたら嬉しいですね。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

私たちは、急遽、創業を実現させることになった割には、スムーズに準備を進めることができました。でも、資金面に関しては、もう少し余裕があった方が良かったかなと思います。なので、前もってしっかりとした計画を立てることをお勧めしたいですね。もう一つは、お店を開く場所選びですね。私の場合は、前の職場があった場所の近くで、さらに工場地帯を選んだことで、以前からのお客様や工場勤務の会社員などにお越しいただいています。思い切りももちろん大切ですが、きちんとリサーチして、分析して、下準備をしてから創業することで、ゆとりを持った経営ができるようになると思います。