創業者紹介

ミヤノオート

植田 祐司

Yuji Ueda

創業の夢の途中で出会った事業承継。
設備投資や人員確保、顧客獲得のリスクがない
土台のあるスタートは大正解でした。

植田 祐司43years old

Yuji Ueda

下関市出身。広島県の工業大学を卒業後、バイクのカスタムショップを経て、アメリカ車のディーラーに就職。ディーラーの日本撤退により創業の準備を進めていたが、後継者を探していたミヤノオートに出会い、熟慮した結果、事業承継の道を選んだ。
 
ミヤノオート
創業:2018年7月
住所:山口市下小鯖3793-12
HP:https://miyano-auto.jp

大学卒業後、バイク好きが高じてカスタムショップに就職した植田祐司さん。10ヵ月ほど勤めましたが、知識不足を痛感したことにより退職。職業訓練校で一から整備を学び直しました。十分な知識と技術を身につけた後、アメリカ車のディーラーに整備士として入社し、順調にキャリアを積んでいたところ、突如、自動車メーカーが日本市場から全面撤退することに。そこで以前から考えていた自動車の修理・販売店を創業することを決意します。現在、モータース「ミヤノオート」の代表として忙しい日々を過ごす植田さんに、事業承継に至るまでの経緯や承継後の現在、そしてこれからの目標などについてお聞きしました。

これまでの経歴を教えてください。

下関の高校を卒業後、広島の工業大学に進学しました。大学時代は仲間とツーリングをしたり、カスタムをしたりと、バイク三昧の日々を過ごしていましたね。卒業後は、好きなことを仕事にしようとバイクのカスタムショップに就職しました。でも、知識不足を痛感してわずか10ヵ月で退職してしまいました…。いわゆる挫折です。そこから整備について一から学び直すために職業訓練学校に入学し、整備士の資格を取得しました。その後、山口県に戻りアメリカ車の販売ディーラーに整備士として入社し、全国技術大会で3位に入賞したり、世界共通資格の最高ランクを取得したり、サービスマネージャーとして全国顧客満足度調査のサービス部門で3年連続日本一を獲得したりと、順調にキャリアを重ねていきました。ところが2016年に、そのアメリカ車メーカーが日本市場から全面撤退することが決定して…。再就職も考えてはみたのですが、この機を逃したらもうないと思い、以前からの夢だった自動車の修理・販売店を創業することを決めました。

純粋な創業ではなく、事業承継になった経緯を教えてください。

自動車整備ができる物件を探すために、山口市と防府市の不動産会社に片っ端から問い合わせの電話をかけてみましたが、良い物件は全然見つからず苦戦を強いられていました。そんなとき、物件探しを通じて出会った不動産会社の担当者から、事業承継を考えていらっしゃったミヤノオートを紹介いただきました。それまで事業承継というカタチは全く考えていませんでしたが、実際に前社長にお会いして、具体的なお話を聞かせていただいたところ、とても魅力的な内容でした。ゼロから立ち上げる場合と、すでにその事業で実績を上げ、顧客を獲得している事業を承継する場合では、初期リスクの大きさが全然違ってきます。しかも事業承継に関わる費用も一切いらないとまで言ってくださって。このお話は本当にラッキーでしたね。

創業(事業承継)のためにどんな準備をされましたか?

創業を決めてすぐに、防府商工会議所が主催する創業塾に参加しました。一番役に立ったのは、事業計画を立てる方法を学べたことですね。自分の中である程度の組み立てはできていたのですが、事業計画書に落とし込むことでより明確にすることができました。創業塾でひと通り学んだ後は、防府市創業支援センターに相談に行ったり、同業者や創業の先輩、山口県よろず支援拠点におられるコーディネーターの方など、知り合いから事業を始めるなら会っておいた方がいいと勧められた人には全員会いに行ったりしました。

創業資金はどのようにして準備されましたか?

自動車メーカーの日本撤退を受けて急遽決めた創業だったので、創業資金は準備していませんでした。ですから、ほとんどが金融機関からの借入です。ただ、同じ借りるにしても、創業より事業承継の方が金利が低かったので、これも私にとってはラッキーでした。そう考えると事業承継はいいことづくしでしたね(笑)。新たな設備投資もほとんどなかったので、借入した資金は中古車の仕入れと、キャンピングカーとカスタムカーのデモカーの購入に使いました。キャンピングカーとカスタムカーの販売は、私がずっとやりたかったことで、やっと夢を叶えることができました。

創業ではなく、事業承継を選んだことで大変だったことはありますか?

最初の2ヵ月くらいは、銀行口座の名義や登記の変更手続きなどの細々とした書類制作で少しバタバタしました。全てが初めてのことでわからないことだらけでしたが、これは創業も事業継承も大して変わりがないと思います。慣れないことばかりでしたが、楽しみながらすることができたので、全然苦にはなりませんでしたね。全ての取引業者との契約が完了したわけではないので、まだしばらくはこうした手続きが続くと思いますが、だいぶ要領を得てきたので問題ないと思います。

創業後、現在の状況はいかがですか?

今のところ、離れていかれたお客様もいらっしゃらないですし、売上も事業計画書に記したものと大きくかけ離れておらず、自分としてはとても順調に推移していると感じています。でも、経理をやっている妻からは、油断するなという意味も込めて「全然順調じゃないよ!」と言われます(笑)。もともといらっしゃった整備士との人間関係も良好です。前職でサービスマネージャーとして培ったコミュニケーション能力や経験が活かされているのだと思います。でも実際のところ、本当の勝負は相談役として在籍してくださっている前社長が完全に退かれてからだと思います。それまでに前社長の築いてこられた信頼を、自分の信頼に変えていけるよう、今は依頼されたお仕事を丁寧にしっかりとこなしていくことを第一に考えています。

創業(事業承継)して良かったことはありますか?

スピーディーに仕事が進むようになって、ストレスが少なくなったことですね。大きい組織に属していると、やりたいことをやるためにはどうしても時間がかかってしまいます。計画書を作ってそれを上司に提出して、上司からOKが出たらそこから上に稟議を通して…と。やっとのことで決定した頃にはもう機を逃していた、ということは何度も経験しました。今は自分の判断ですぐに行動できるのがいいですね。ただその分、失敗することもありますけど(笑)。失敗してしまった場合は「いい経験になった!」と自分に言い聞かせ、前向きに捉えるようにしています。振り返ってみると、事業承継という選択は大正解だったなと思います。むしろ事業承継じゃなかったら、今頃どうなっていたんだろうと怖くなるくらいです(笑)。これから事業承継を希望される経営者はどんどん増えてくると思いますので、機会があれば自分の経験を活かしたアドバイスなども積極的にしていきたいなと思っています。

今後の目標を教えてください。

まずは、前社長に頼らなくてもやっていけるようにしていくこと、そして、事業を継続させていくためにお客様も整備士も若返りを図ることですね。若い世代のお客様への認知度を高めるための対策にホームページとFacebookページを開設しました。またロゴマークも新しくして、イメージチェンジにも取り組んでいます。さらに、これまでの乗用車の販売に加えて、キャンピングカーやカスタムカーにも力を入れて取扱商品の幅を広げていきたいと思っています。そして将来的には、タイヤ店や鈑金塗装店など車に関わるいろんな業者とそれぞれが得意な部分を発揮しながら一緒にやっていけるネットワークを構築して、お互いに協力しながら効率よくやっていきたいですね。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

自分の考えや発想だけで決めてしまわずに、同じことを経験したことがある人や自分が目標とする人、相手の持っている知識を自分も得たいなと思える人などに、目標を達成するための手段や方法について、話を聞いてみることをオススメします。そして、何もかも一人で抱え込まずに、頼れるところには思い切って頼ることですね。私は自分の力を全然信じていないので、たくさんの人に頼っています(笑)。動いていただいた分は、自分も絶対に必ず恩返しをする気持ちを忘れないようにすればいいだけのことですから。自分を支えてくれた人への感謝の気持ちを絶対に忘れずにやっていけばきっといい関係が築け、自分自身だけでなく、周りも一緒に成長していけると思います。