創業者紹介

ソーイングスポットOriOri

児玉 香織

Kaori Kodama

キャリアを中断した私にとって創業は、
人生にハリをもたらすきっかけになりました。

児玉 香織56years old

Kaori Kodama

山口市生まれの50歳。「女性創業セミナーWITTY」の「ブルーオーシャン賞」受賞を機に、2017年9月、レンタルスペース「ソーイングスポットOriOri」を創業。

 

ソーイングスポットOriOri

創業:2017年9月

住所:山口市幸町3-18

HP:http://ssoriori.com

「手ぶらで楽々ソーイング」をコンセプトに、ソーイングの道具一式とミシンを備えたレンタルスペース「ソーイングスポットOriOri」を経営する児玉香織さん。大学卒業後、20年間市役所に勤めていましたが、子育てに専念するためにキャリアを中断した経歴を持ちます。創業のきっかけは、「もう一度自分の力でやってみたい!」と思ったこと。経営者へと転身したその道のりや、創業したからこそ得られた喜びなどをお聞きしました。

創業しようと思った理由を教えていただけますか?

大学を卒業後、山口市役所で20年ほど勤めました。在籍中は、税務や人事、教育など幅広い分野を経験しました。子育てに専念するために退職しましたが、もともと働くことが大好きだったので、子育てが少し落ち着てからパートタイムの事務職に就きました。数年が経って50歳を目前にした頃、「若い働き手がたくさんいるのに、このままずっとパートタイマーとして働き続けられるのかな…」とふと思い、「細く長く働き続けたい。定年のない仕事がしたい」と考えるようになりました。それからは漠然と創業を意識していたように思います。そこには、「一旦はキャリアを中断したけれど、もう一度、自分の力でやってみたい!」という気持ちもありましたね。

なぜソーイング関連のレンタルスペースにしたのですか?

最初から「これだ!」というものがあって創業を考えていたわけではありません。いつかは創業したいなと思いながら、私にできること、私の得意なことで商売にできそうなものを考え、たどり着いたのがソーイングでした。幼稚園や小学校が始まる前は、お母さんたちはミシンが必要になる。けれど、それだけのためにミシンを買うだろうか? ミシンが借りられるお店があったら便利だな。教えてくれる人がいたらもっといい。道具一式も借りられたらいいな。型紙や布地も販売したらどうだろう?…と。「これならいけるかもしれない!」と思いました。

創業にあたって、どこかで学んだり、指導を受けられたりしましたか?

最初に参加したのは、山口県、(公財)やまぐち産業振興財団主催の「女性創業セミナーWITTY」です。家族には内緒で申し込みました。経営戦略やマーケティング、事業計画書の作成、プレゼンの練習など、創業・経営に必要なさまざまなことを3ヶ月間しっかりと学び、「自分がやりたいこと、できることだけでは商売は成り立たない。商売として成立させるためには、いろんな選択肢を考え、その中から現実的な部分を選択していかなければならない」と痛感しました。最後に行われたプレゼン大会で「ブルーオーシャン賞」を受賞し、これが自信となってやっと家族に相談でき、創業を決断しました。WITTYでは創業や経営について学べただけでなく、創業という同じ目標を持った方々とご縁ができたことにも感謝しています。OriOriのロゴマークを作成してくださったのも、WITTYで出会えたデザイナーさんです。

その他にセミナーは受講されましたか?

創業を決断した後、山口商工会議所が主催する「山口起業カレッジ」に参加しました。5日間のプログラムですが、マーケティング戦略の基本や財務管理の基礎などの講義はもちろんのこと、個別指導の時間もしっかりと設けられていて、とても濃厚な内容でした。WITTYで基礎的な知識は得ていたので、ここではさらに数字を突き詰め、より具体的なシミュレーションができました。また、作成していた事業計画書も違う視点で見直しができ、より説得力が増したものになったように思います。もちろん、ここでも多くの同志との出会いがありました。

資金集めはどのように行われたのですか?

ある程度の自己資金、そして不足分は金融機関から借り入れました。借り入れる際に大変役に立ったのが、WITTYと山口起業カレッジで作成した事業計画書です。多少手を入れましたが、ほとんどそのままで金融機関に提出しました。2つのセミナーを受講しなかったら、きっとここまでの事業計画書はできていなかったと思います。審査には通りませんでしたが、補助金申請の書類作りにも事業計画書はとっても役に立ちました。

セミナーの参加以外に創業前はどんな準備をされましたか?

福岡や広島にある同業者さんに視察に行き、店舗の内装や配置、ミシンの台数、品揃え、商売の展開の仕方などを参考にしました。「山口県よろず支援拠点」では、開業の事務手続きやホームページ作成に関するアドバイスなどをいただき、とても参考になりました。

創業の準備で大変なことはありましたか?

床材や壁紙まで全部自分で決めていたので、開店前は正直バタバタでしたね。内装の工事を業者さんに任せっぱなしにしていて、オープン直前までロールスクリーンが取り付けられていないことに気づかなかったなんて失敗も(笑)。後からトータルでコーディネートしてくださる専門家や業者さんの存在を知って、力を借りればよかったなと思いました。自分一人ではできることは限られます。全部を一人で抱え込むより、思い切って頼んだ方がいい場合もあることを学びました。

創業後、事業はスムーズに進んでいますか?

開店してすぐは、もの珍しさからか予定よりも多くのお客さんにお越しいただきました。けれど2ヶ月を過ぎた頃から徐々に客足が遠のいき、誰も来ない日があるようになりました。何か行動を起こさないとと思い、近所のお店や施設にチラシ設置のお願いをしてみたのですが、なかなかいい返事がもらえず…。そこで、再び山口県よろず支援拠点に足を運び、フリーペーパーを使った宣伝方法やSNSでの発信方法、魅力的に見える写真の撮り方、イベントの開催など、さまざまなアドバイスをいただきました。セミナーの同期と集まって近況報告をする中で、アイデアが浮かんだこともあります。そういったアドバイスや意見を参考にしながら、宣伝活動を地道に継続した結果、初心者対象のソーイング教室のレッスン生が大幅に増えました。一度利用してくださった方がリピーターになってくださったり、お友達を連れて来てくださったりと、今のところ順調に経営できています。

創業して良かったことはありますか?

とにかく楽しいです!  大変なことももちろんありますが、全てを自分で決められる、毎日何かに挑戦できるってすごいことだなと思います。また、作品を完成させたお客さんや、レッスンを終えたお客さんから笑顔で「ありがとう」と言っていただけたとき、心から嬉しくなります。「私の方こそありがとうございます!」と言いたくなるくらいです。後はやっぱり「出会い」でしょうか。お客さんや業者の方、商工会議所など相談に乗ってくださる方など、本当にたくさんの新しい出会いがあります。また、しばらく音信不通だった友人から「創業したの?」と連絡があってわざわざお店に足を運んでくれたりと、いくつかの「再会」も経験しました。自分の世界が確実に広がっているのを感じます。「創業してから何か変わった?」と聞かれる度に、「生きることに張り合いができた」と答えています。

今後の目標を教えてください。

まずは経営を安定させることですね。そのために1人でもお客さんを増やしていきたいです。そして自分一人だけではなく、一緒にやってくれる仲間を見つけてチームで展開することもできればと思っています。例えば、洋服のオーダーをお受けする数を増やしたり、お客さんの作品を販売できる仕組みを作ったり、いろんな分野のプロフェッショナルを招いてワークショップを行ったり。ソーイングを通じてできること、このスペースを使って取り組めることに、これまで以上に積極的にチャレンジしていきたいですね。

現在創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

アイデアが生まれたら、自分の中で温めて、育て続けるといいと思います。そして私が、WITTYや山口起業カレッジに参加したように、ぜひ、一歩踏み出してみてください。そこで出会えるさまざまな方のアドバイスや意見を参考にしながら、しっかりと下準備をすることで、夢を実現する可能性はさらに高くなると思います。やりたいと思ったことが、これまで経験したことと全く違うことでも大丈夫。「人生無駄なし」です! これまでの経歴や人生で得たもの全てをフル活用して、ぜひチャレンジしてみてください。