イベントレポート

Introduction

今回は、令和2年9月16日に下関市で開催された創業セミナーを取材しました。創業に興味がある人、創業を考えている人、これから創業する人など、下関市内外から約40名が参加しました。講師を務めた中小企業診断士・阪本和幸氏のご自身の創業経験に基づくリアルな感想やアドバイスを交えながらのお話は大変興味深く、参加者は熱心に耳を傾けていました。創業に関する基礎的な知識だけでなく、創業のメリット、デメリットの双方を知ることができた貴重な2時間となりました。

〜夢への一歩を応援します!〜創業セミナー

開催日時:2020年9月16日(水)14:00〜16:00

開催場所:シーモールパレス(下関市竹崎町4-4-8)


主催者:下関商工会議所


講師:阪本中小企業診断士事務所 代表・中小企業診断士 阪本和幸氏

講師プロフィール

1984年生まれ、下関市出身。銀行員、商工会指導員を経て経営コンサルタントとして独立。
経営に関する知見は豊富で、県内外問わず創業セミナーの講師を務めており、経営の基礎をわかりやすく解説することに定評がある。
 
●性別 男性(17名)、女性(14名)
●年齢 20代(1名)、30代(4名)、40代(15名)、50代(8名)、60代以上(3名)
●現在の状況 会社・組織等に勤めている(17名)、創業準備中(8名)、経営者(5名)、学生(0名)、無記入(1名)

講演内容
●データで見る創業

(地域経済分析システムREASAS、中小企業白書、日本政策金融公庫総合研究所調査より)
・下関市の創業比率はおよそ5%。全国、山口県の平均とほぼ同じ数値。
・創業時の平均年齢は43歳で上昇傾向にある。年代も40代以下が70%。
・実務経験を活かした創業者は8割超え。平均経験年数は約15年。
・創業の一番の理由は「自由に仕事がしたいから」。
・創業後の労働時間は週50時間以上が約60%。
・開業費用の平均は約1,000万円。ただし、割合で見ると500万円未満が多い。
・創業時、創業後に関わらず、顧客・販路の開拓と資金繰り・資金調達は苦労する。
・創業者の約7割が創業に満足している。

●経営者と会社員の違い

個人事業主は、会社員とは異なり、自分で選んだことの結果(リターンとリスク)が全て自分に返ってくる。また、労災保険や雇用保険、厚生年金には加入できず、保険料全額自己負担で国民年金、国民健康保険に加入する必要がある。税金については、所得税、個人住民税、個人事業税が発生する。

【創業のメリット】

・自由にものごとを決断でき、やりたいことが実現できる
・事業が上手くいけば、高収入が期待できる

【創業のデメリット】

・全て自己責任であり、だれかが守ってくれることはない
・収入に保証はなく不安定。事業が上手くいかなければマイナスもあり得る

●創業するとどうなる?(阪本氏の体験談)

阪本氏の略歴やビジネスモデル、創業前後の動き、創業による環境の変化、創業後の満足度を実例として紹介。
・独立を考え始めてから実際に創業するまで約9年を費やし、その間に経験を積み、資格を取得。
・経営が順調で創業に満足していても、「将来の不安」は必ずついて回ることを実感。

●経営するということ

利益を生むことや資金繰りへの注意だけでなく、高い志を持つことも経営者には必要。事業を展開するうえで重要なのは、ニーズを取り込むことや他社との差別化など。

【サラリーマンと経営者の違い】

・サラリーマン=プレイヤー
・経営者=マネージャー
・小規模事業者(創業者)=プレイングマネージャー

●創業に必要なこと

せっかく創業した企業も5年後、10年後となると多くの企業が姿を消している事実がある。継続には創業時にいかにしっかりとした計画を立てるかが重要。支援機関やサポート制度の活用を勧める。

●継業による創業

創業の一つの手段として事業承継(継業)による創業も視野に入れるべきである。
その支援ツールとして、事業引継ぎ支援センターの「後継者人材バンク」や山口県の「やまぐち事業承継マッチングサイト」なども有効である。
なお、事業承継については、下関商工会議所山口県事業承継引継ぎ支援センター等の支援機関へ相談頂きたい。

【創業される方へのメッセージ】

・計画的に創業しよう!
・自己資金と業界経験、ないなら「貯める」
・「継業」という選択肢も。

参加者の感想

・「リスクをきちんと把握したうえで、しっかりと戦略を練ることが重要だと分かった。創業一年前くらいから宣伝するなど、資金繰り以外についても具体的な計画を立てようと思う」(40代夫婦)
 
・「創業後も将来の不安がついてくることを改めて痛感し、もっと強い覚悟が必要だと思った。安定した経営ができるよう、これからしっかりと計画を立てていきたい」(50代男性)
 
・「すごくわかりやすい講演だった。創業はハードルが高いイメージだったが、きちんと計画を立てて確実にステップを踏むことで、乗り越えられそうだと感じた。相談できる機関についても紹介してもらえたので、ぜひ活用して、漠然とした不安の本質が何なのかを見つけたい」(40代女性)
 
・「広い視野を持った中小企業診断士の話を聞いて、同業者の話だけではわからなかったことに気づけた。自分の計画をもう一度見直し、ブラッシュアップすることでより堅実なものにしたい」(40代男性)
 

講師からのメッセージ

「創業支援や事業再生の仕事を通じて、日々、計画を立てることの大切さを実感しています。だからこそ、創業を予定されている方には、事業計画作成の重要性を、毎回、口を酸っぱくしてお伝えしています。『経営のリスクはなくならないけれど、計画的に事業を行っていくことで小さくすることはできる』、これは私自身が経営するうえで学んできたものであり、数多くの企業をサポートする中で実感したことです。今、世間は新型コロナウイルスにより、いろいろと制限が多いですが、そんな状況にも負けず創業される方を、私は応援しています」

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