イベントレポート

Introduction

今回は1月20日に開催された山口県女性創業応援ミーティング(下関会場)を取材しました。
本ミーティングは山口県内の女性創業者や創業を考えている女性に対し、先輩女性創業者による創業体験談や行政・支援機関等による支援メニュー紹介、参加者同士で情報発信・情報交換をすることにより、今後のビジネス展開の促進や創業機運の醸成を図るために県内4か所で開催されました。
講師(先輩創業者)による講演は以下のとおり。

ニッチ産業×社会課題から事業をつくりだす

開催日時:2019年1月20(日)

13:00〜14:00講演
14:00〜14:30行政による支援紹介
14:30〜15:00参加者同士による情報交換

開催場所:創業支援カフェ KARASTA.(下関市赤間町1-10)


講師:NPO法人あっと 副代表理事 藤井智佳子 氏

講師プロフィール

山口市出身・在住。福岡の短大を卒業後、企業の総合職を経験。山口市に帰郷。団体職員として働き、結婚・出産を機に退職。2005年、地域子育て支援拠点「ほっとさろん西門前てとてと」のスタッフとして活動。2008年に子育て支援を専門とするNPO法人あっとの理事に就任、子育てしやすいまちづくりと子育て家族の支援などの社会課題解決型の事業を行う。2013年、保育士資格を取得。現在は、NPO法人あっとの副代表理事として活動しながら、一般社団法人 女性活躍委員会が主催する「山口女性大学院」の第1期生として再び経営を学ぶ。また、山口市にある地域子育て支援拠点「ほっとサロン西門前 てとてと」のセンター長、「ほうふ女性しごと応援テラス」の相談支援員を務めるなど、再び社会で活躍したい女性の支援なども行っている。

講演概要

「子育てからはじまるコミュニティの創造」を目的に設立されたNPO法人あっとの副代表理事を務める藤井智佳子さん。営利事業を担当し、一時保育や子育てポータルサイトの運営、さまざまな企業とコラボした取り組みなどを行っています。今回のセミナーでは、子育てママのニーズから生まれた一時保育事業を中心に、ニッチ産業×社会課題の解決という視点から、事業を展開する上で気をつけたいポイントについて紹介されました。

講演内容

●ニッチな市場を開拓する
社会課題を含んだスキマの事業、いわゆるソーシャルビジネスと呼ばれるものは世の中にたくさんある。行政や企業の手が届かないスキマを埋める取り組みを行うこと、まだ誰も手を付けていないサービスや製品の提供を目指す。そのためには、事前の下調べも必要。
 
●どんなスタイルにするのかを考える
起業する際は、個人、法人、NPOなど、どんなスタイルにしたいのかを考える。たとえ個人事業主であっても、いずれは法人化したいなど、明確な目標をもつことが大切。
 
●何業に当てはまるのかを調べる
業種によって、資産や預金、資格などの条件が変わってくる。人材派遣業なのか、あるいは業務請負業なのかなど、その事業が何業に当てはまるのかを事前に調べておく。また、その事業が、右肩上がりなのか、右肩下がりなのか、市場の動向もチェックしておく。
 
●長期キャリア形成を考える
10年後、自分はどういう立ち位置にいたいか。長期的な視点で自分のキャリアを積み重ねていくことが大切。子育て等で一旦仕事をやめてしまっても、ゆるやかにキャリア(ゆるキャリ)を形成していく柔軟性も必要。
 
●ミッションやビジョンを見える化する
事業を展開するなかで、人が増えていくと、軸がブレていくことがある。事業に関わる全ての人が共通した思いで取り組むために、ミッションやビジョンを掲げ、皆で共有することが大切。
例)NPO法人あっと:「子育てがハンデではなくアドバンテージになる社会へ」
一時保育事業:「託児は未来のまちづくり」
 
●Win-Winの関係をつくる
事業に対する理解を得るためには、サービスを提供する側とそのサービスを利用する側、双方にメリットがあるWin-Winの関係をつくることが大切。
 
●ひと、もの、お金の3つを揃える
【ひと】質のよいスタッフを確保する。事業を支えてくれる人脈をつくる。
【もの】自分たちの目的を達成するための製品やサービスを考える。
【お金】必要となる金額を試算する。人を雇う際には最低賃金に気をつける。
 
●やりたいこと、今できること、求められていることは何か
やりたいことと今できること、周りから求められていることは違う。まずは、求められていることからチャレンジして、将来的にやりたいことへとステップアップできるように、実力とネットワークをもつことが大事。
 
●人とのつながりを大切にする
人との交流やネットワークを通して、ニーズをキャッチし、スキマである社会課題を見つけだすことが、事業を成功させる近道。

参加者感想

・「10年後という長いスパンで考えたときに自分がどうありたいのかを考えること、思いを共有することの大切さを知り、とても良い勉強になりました」(44歳女性・宇部市・子育て支援団体)
 
・「今の時代、いくらでもネットで情報を得ることはできますが、やはり生の声をお聞きするのが一番。考え方やプロセスなど、事業を展開していく上でのヒントがたくさんありました。また、違う業種の方と話すことで発想も大きく広がりました」(52歳女性・山口市・スポーツインストラクター業)
 
・「業種は違っても思いは一緒。起業をめざす女性とのつながりができたことは大きな収穫でした。また、相談機関や助成金などの情報を得られたのも良かったです」(56歳女性・下関市・訪問美容サービス)
 
・「今やれること、将来やりたいこと、周りから求められていることを明確にすることが必要だと感じました。子育てをしながら社会で活躍されている女性のバイタリティーを肌で感じ、とてもいい刺激を受けました」(29歳女性・下関市・農産物の生産ならびに卸売業)