創業者紹介

ほうふーどファクトリー

福田 章弘

Akihiro Fukuda

畑から生まれる“もったいない”を有効活用。
生産者と消費者をつなげながら
地域の農業と食を盛り上げていきたい。

福田 章弘36years old

Akihiro Fukuda

山口市出身。山口農業高校食品工学科を卒業後、愛媛大学農学部生物資源環境学科に進学。同大学院農学研究科を修了。教員として田布施農工高校や山口農業高校で11年間働いた後、退職。2023年5月、小ロットでのレトルト食品などの商品開発・製造・販売を行う「ほうふーどファクトリー」を創業。山口農業高校食品工学科非常勤講師。JHTC認定HACCP上級コーディネーター。

ほうふーどファクトリー
創業:2023年5月
住所:防府市中泉町10-5
HP:https://hoofood.base.shop

以前は農業高校の教員として働いていた福田さん。授業の一環として地域と連携した商品開発プロジェクトに取り組むなかで、規格外のため未出荷となる農作物が多い現状を知りました。畑から生まれる“もったいない”を有効活用して、地域の農業や食を応援できないだろうか…。そんな思いが次第に膨らんでいき、レトルト食品を中心とした加工食品の製造・販売を行う「ほうふーどファクトリー」を創業しました。これまでの経験を活かして新たなチャレンジに挑む福田さんに、創業までの道のりや今後の目標などについてお聞きしました。(取材日:2023年11月7日)

これまでの経歴をお聞かせください。

小さい頃から祖父母の家で農作業を手伝うのが好きで、将来は農業に関連した職業に就きたいと考えていました。農業高校を卒業後は大学の農学部に進学。大学院を修了後は教員として田布施農工高校や山口農業高校で11年間働きました。

事業内容をお聞かせください。

少しの傷や変形、大きさが規格に合わないことなどを理由に廃棄されてしまう農作物を使って、レトルト食品やドライフルーツなどの加工食品の製造・販売を行っています。保存料や着色料などの食品添加物はできるだけ使用せず、素材そのものの味や栄養素を生かした安心・安全な食の提供を目指しています。製造した加工品は自社ホームページや「スマイルほうふ」で販売したり、地元のマルシェに出品したりしています。また、カレーなどのレトルト食品のOEM(相手先ブランド製品)も受注しています。

どうしてこの事業を立ち上げようと思われたのですか?

農業高校で食品加工や商品販売などの授業を担当するなかで、農業や食品製造のさまざまな現場を見てきました。そのなかで、規格外のため買い手がつかず捨てざるを得ない農作物がたくさんあることを知り、もったいないなと感じていました。授業の一環として、地域と連携した商品開発のプロジェクトも手掛けていましたが、どうしても一過性の取組で終わってしまい、継続にはつながりませんでした。継続して農作物の収穫ロスを減らす良い方法はないだろうか…。そこで思いついたのがレトルトを中心とした食品加工です。地元で生産したものを地元で加工・販売する仕組みをつくり、地域の農業と食を支える力になりたいと思いました。最初はパンやお菓子の製造も考えましたが、コロナ禍もあり、常温での長期保存が効くレトルト食品に可能性を感じました。また、県内には小ロットのレトルト食品の製造を請け負っている企業が少ないため、OEM供給を行うことで、潜在的なニーズの掘り起こしもできるのではないかと考えました。

創業するにあたってどこに相談されましたか?

防府市中小企業サポートセンターCONNECT22に相談に行きました。おぼろげながらやりたいと思っていることを創業アドバイザーにお話したところ「ぜひ形にしましょう!」と背中を押してくださったので、思い切って創業に踏み切ることができました。また、地元の先輩創業者や生産者さんとのつながりをつくっていただいたことも大きかったです。事業計画書を作成しながらレシピ開発を行ったり、自宅横の土間を改修して加工場を作ったりと、創業に向けて準備を進めていきました。

創業資金はどのようにして準備されたのですか?

防府市中小企業サポートセンターCONNECT22で教えていただいた(公財)やまぐち産業振興財団「やまぐち創業補助金」を活用させていただきました。交付された補助金は、食品乾燥機や真空包装機などの設備費、原材料費などに使わせていただきました。また、東山口信用金庫と日本政策金融公庫との協調融資も活用させていただきました。

創業するにあたって大変だったことは何ですか?

事業計画書の作成です。文章を作るのは比較的得意な方だったのですが、お金のことに関しては疎くて…。どのくらいの資金が必要か、どのくらいの売上が必要なのかなど、防府市中小企業サポートセンターCONNECT22にアドバイスしていただきながら事業計画を立てていきました。特に悩んだのが価格設定です。先輩創業者から「最初に安く設定してしまうと、後から値段を上げていくことは難しい」とお聞きして、しっかりと原価率を計算した上で収支計画に基づいて設定しました。

創業するにあたって想定外のことはありましたか?

我が家は井戸水なのですが、実は工事を行っている段階で、肝心なレトルト殺菌機を使用するにあたって必要な水圧が足りないことが判明しました。そのため、新たに井戸を掘ることになり、追加費用がかかってしまいました。機械を購入する前によく調べておけば良かったなと反省しました。

宣伝のためにどんな工夫をされましたか?

先輩創業者からアドバイスをいただき、ホームページを自分で作成して、通信販売をスタートしました。新商品やイベント出店などの情報はInstagramで発信しています。教員時代に培った知識を活かして、ロゴマークやシールは自分で作成しました。

創業して良かったことは何ですか?

生産者や企業とのつながりを広げていくなかで、「こういう加工をしてくれるところがほしかった」という声が寄せられるようになりました。OEM発注も増えてきたことで、地域から必要とされていることが実感できて、ようやく自信が持てるようになってきました。 家族との時間が増えたことも大きなメリットです。教員時代は仕事が優先になりがちでしたが、今はスケジュールを自由に組めるので、子どもの行事に参加できるようになりました。

今後の目標についてお聞かせください。

さまざまな農作物を使った「農家カレー」シリーズやパスタソースなど、新たな商品を開発中です。将来的には加工場を大きくして、介護施設向けの食品や非常食、小さなお子様向けのレトルト食品なども開発していきたいと思っています。また、農家とのつながりを広げて仕入れ先を増やし、JAや道の駅、サービスエリアなどに販路を広げていきたいです。これからも生産農家さんと消費者とをつなぎながら、地域の農業と食を盛り上げていきたいと思っています。

現在、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

まずは自分の考えをいろいろな人に相談してみてはどうでしょうか。そこから現実的なビジネスモデルが見えてくると思います。大事なのは、目的を明確にして、やり方には固執しないこと。「こうでなければダメだ」と決めつけてしまうと、すぐに行き詰まってしまいます。アプローチの方法は一つではないので、他の人の知恵を組み込んでいくことが必要だと思います。 食品加工に限って言えば、先に加工場を作ってしまうと、後で保健所からNGが出てしまう可能性もあるため、まず図面上で営業許可に適合するかどうかを保健所に確認してもらうことをおすすめします。