創業者紹介

株式会社 紬〜つむぎ〜

岡田 直美

Naomi Okada

働きたいのに働けない
お母さんのために
復職を支援する環境を提供したい。

岡田 直美46years old

Naomi Okada

大分県出身、結婚を機に下関へ移住。保育士として保育園や幼稚園、認可外保育所などで経験を積むうちに、勤務条件や経営方針に疑問を抱くようになり、やがて理想の保育園の設立を目指すように。夫の会社の事業として1つの認可外保育所を立ち上げたのち、保育所運営(シフト管理などのソフト面)を丸ごと受託する株式会社紬を創業。
 
株式会社 紬〜つむぎ〜
創業:2017年9月法人化(個人創業は2016年9月)
住所:下関市王司上町1-8-18
HP:https://tsumugi-kids.com

長年、保育園や幼稚園、認可外保育所で保育士として勤めてきた岡田直美さんは、ブラック保育園をなくすため、そして子育てする女性の復職を支援する環境を提供するために、保育園運営を丸ごと受託する株式会社紬を創業しました。「地域と社会が親子をつなぐ環境づくり」を理念に掲げ、忙しい毎日を送る岡田さんに、創業に至るまでの経緯と現在の状況、これからの目標などについてお聞きしました。

これまでの経歴を教えてください。

大分県の高校を卒業後、福岡県の短大に進学して保育士の資格を取得しました。特別養護老人ホームで1年間勤務した後、保育園・幼稚園・認可外保育所などで保育士の経験を積み、結婚を機に下関へ移住してきました。10年以上保育士として働いていたのですが、「どうしてブラック保育園が存在するんだろう?」「もっと働きやすい保育園はないのだろうか?」といった疑問を抱くようになり、一度保育士の仕事から離れたこともあります。いろいろと悩んだ末に、「これはもう自分で保育園を作るしかない!」と思い立ち、夫の会社の事業の一つとして、2010年にヤクルトの事業所内保育所を兼ねた民間保育所「こどものいえ そらまめ」を、2011年には夫が開業する歯科医院の隣に、託児所「こどものへや ぶどうの木」を設立しました。

紬の創業に至った経緯を教えてください。

認可外保育所を運営する中で、もっとこうしたら子育て中のお母さんが働けるのに、こんな環境が整ったら仕事を辞めないで済むのに…、といろんなアイデアが浮かんでいました。と同時に、民間保育所「こどものいえ そらまめ」をどうしたらいいのだろうかと悩んでいました。認可外の保育所は補助金が受けられないので、勤続年数とともに人件費はアップし、経営は厳しくなるばかり…。でも、スタッフは絶対に守りたい…、そう思っていたときに、友人が山口県女性創業セミナー「WITTY」に誘ってくれました。「こどものいえ そらまめ」の今後について相談しようと思っていたのに、まさか「紬」を創業し、「みなとあひるっ子園」を運営することになるとは全く思っていませんでしたね。

WITTYではどのようなことを学ばれたのですか?

広報やマーケティング、事業計画書の作り方などについて教えていただきました。そして学んだことをことを参考にしながら、「地域と社会が親子をつなぐ環境づくり」をテーマに、できるだけリスクを負わずに継続し続けられる社会貢献の仕組みを考え、事業プランへと落とし込んでいきました。最後にあるプレゼン大会でブルーオーシャン賞を受賞することができたことが、創業への大きな弾みになりました。またWITTYで出会った経営コンサルタントの先生が私の想いに共感してくださったのも大きな後押しになりましたね。

創業資金はどのように準備されたのですか?

自己資金と「女性創業応援やまぐち株式会社」からの委託料です。ただ「女性創業応援やまぐち株式会社」からの委託料は1年以内に返済しないといけなかったので、最低でも軌道に乗るまで2年を要した私の事業には不向きでした。事前にきちんと調べておけば、より有効に制度を活用できたのにと反省しています。経営者には契約書を読み込む力も必要なのだと痛感しましたね。

創業してからこれまでの間、失敗や苦労はありましたか?

「みなとあひるっ子園」は、建物などのハード面はパートナー企業、ソフト面は「紬」が全部受託するという企業主導型保育事業所というスタイルで運営しています。パートナーとなる企業探しにはとても苦労しました。私たちの想いには理解してもらえるのですが、具体的に話を進めていくと資金面や条件がなかなか折り合いませんでした…。また、みなさんからのアドバイスやアイデアに振り回されすぎて、自分が本当にやりたいことが見えなくなってしまった時期もありました。自分の信念をきちんと持って、その上でアドバイスを聞かないといけないのだと身をもって学びましたね。

創業後、現在の状況はいかがですか?

おかげさまで「みなとあひるっ子園 唐戸」は軌道に乗り、順調に運営できています。さらに、2019年6月に開園する「みらこ保育園」、7月に開園する「みなとあひるっ子園 武久」、そして民間保育所「こどものいえ そらまめ」の運営受託も決定しており、ますます忙しくなる予定です。おかげさまで、「こどものいえそらまめ」に通っていたお子さんのお母さんや昔の同僚など、いい人ばかりをスタッフに採用させていただくことができました。本当に人に恵まれているなと感じています。

売上については順調ですか?

ありがたいことに順調に伸びています。女性が働きやすい環境を作ること、ブラック保育園をなくすことが一番の目的なので、利益よりも協力企業を増やし事業を継続させることを最優先しています。また、たくさんのパートナー企業と働きたいお母さんとのマッチングにも力を注いでいます。「紬」では、お母さんの社会復帰をサポートすることも育児支援の一つだと考え、保育士の復職だけでなく、いろんなお母さんを社会に送り出すお手伝いもしています。また、紬が運営する保育園では、女性が働きやすい職場のモデルケースになれるよう、短時間勤務や子連れ出勤を認め、希望休が取れるなど環境作りに取り組んでいます。これにいろんな企業が触発されて、お母さんの働き方を見直してくれたら嬉しいですね。そしてそれが企業の働き手不足問題の解消につながることも期待しています。

現在のワークライフバランスはいかがですか?

仕事の方が多くの割合を占めていますね。なので、仕事とプライベートのオン・オフをしっかり切り替えるために「仕事を家に持ち帰らない」「出張がない日曜日は家族のために使う」とルールを決め、家族との時間を大切にするように心がけています。また、日々の家事は夫が積極的に参加してくれており、そういったことにも大きく助けられています。充実した毎日が過ごせているのは、家族の理解と協力があってこそなので、夫や子どもには心から感謝しています。

創業して良かったことは何ですか?

創業して良かったことは三つあります。一つ目は、スタッフや園児のお母さんたちの活き活きとしている姿を見られること。二つ目は「自分の子どもを育てたい!」というスタッフの想いを叶えられる環境づくりができていること。そして三つ目が、スタッフを正規職員として採用できるようになり、金銭的にも還元できるようになったことですね。

今後の目標を教えてください。

現在、琉球大学 教育学部の研究チームと連携し、乳幼児の概念形成や発達などについて研究するプロジェクトを進めています。その研究結果を活かして、保育所運営のモデルを確立してパッケージ化し、実際に困っている保育所に提案するのが私の目標です。女性が働きやすくなって、子どもたちも保育所に通いやすくなる社会にするためには、子どもたちの行動や傾向を分析した育児法だけに偏ったものではなく、職員の働き方までをも含んだパッケージを完成させ、「子育て中に保育士はできない」ではなく、女性が子育てしながらも、長く安心して働ける選択肢の一つに保育園があるんだよ、と堂々と言えるようにしたいですね。保育士不足が叫ばれていますが、数を増やしても解決できない現実があります。本当は続けたいのに諦めてしまった保育士がどれほどいることか…。働く環境を改善することが問題解決に繋がっていくと思います。

創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

想いももちろん大切ですが、やっぱり数字は大事です。アイデアがあっても継続できなければ意味がないですし、関わってくださる方たちに迷惑をかけてしまいます。ですから、しっかりとした計画を立てて、その計画で本当に形になるかどうかを慎重に検討・判断することが重要だと思います。また、数字について敏感になることは、目標が明確になることにもなるので、モチベーションアップにも繋がります。資金がなくてもできるアイデアはあるかもしれませんが、長く継続させることを考えたときには、やはり数字は大きなポイントになってきますので、ぜひしっかりと向き合ってください。社会のためになり、みんなに支持される事業は、きっと長く継続できると信じています!