創業者紹介

特産cafeやまのわ

山田 豊佳

Toyoka Yamada

まだ知られていない山口県の魅力を
食を通じて全国に伝えていきたい!

山田 豊佳51years old

Toyoka Yamada

山口県熊毛郡上関町出身。5歳のとき大阪府に移住。大学を卒業後、医薬品や健康食品を卸す商社に就職。社運をかけた新規事業を軌道に乗せるも、体調を崩して44歳のときに退職。2018年7月に山口県に移住。2019年6月、山口県の特産品を具材に使用したコッペパン専門店「特産café やまのわ」を山口市中心商店街「マルシェ中市」にオープン。2020年12月に2店舗目となる「サビエルカンパーナ&特産caféやまのわ アルク小郡店」をオープン。2021年11月に法人化、現在に至る。
 
特産caféやまのわ マルシェ中市店
創業:2019年5月
住所:山口市中市町3-8
HP:https://www.yamanowa1.com

約20年間勤めた会社を退社し、47歳で起業を決意した山田さん。長年にわたり大手コンビニチェーンの弁当や駅弁の開発に携わってきた妻の協力を得て、2019年6月、山口県の特産品や食材を使用したコッペパン専門店「特産caféやまのわ」を開業しました。2020年12月には、2店舗目となる「サビエルカンパーナ&特産caféやまのわ アルク小郡店」をオープンし、着実に成長を続けています。「ご当地コッペで山口県の特産品や観光の魅力を発信していきたい」と夢を語る山田さんに、創業を決めた理由や創業前の準備、これからの目標などについてお聞きしました。(取材日:2021年12月7日)

これまでの経歴をお聞かせください。

大学を卒業後、医薬品や健康食品を病院やドラッグストアに卸す商社に就職しました。30歳まで大阪で過ごした後、石川、東京に転勤。38歳のときに、社運をかけた一大プロジェクトの初期メンバーに抜擢されました。しかし5年後、事業がようやく軌道に乗ったときにうつ病を発症してしまい、退社せざるをえなくなりました。さまざまな支援制度を活用し、就職活動を再開したものの、中高年の再就職はハードルが高くて、なかなか就職先が見つからず…。そこで、起業することを決意。長年にわたり大手コンビニチェーンの弁当や駅弁の開発に携わってきた妻の協力も得て、夫婦で起業するイメージを固めていきました。そのときに生まれたアイデアが、山口県の特産品や県産食材にこだわったコッペパン専門店です。

どうしてこの事業を思いついたのですか?

上関町出身ということもあり、離れて暮らしていても山口県のことは気になっていました。山口県は三方を海に囲まれており、海産物も農産物も多種多様なものがあります。これだけ魅力的な食の宝庫なのに、特産品といえばフグや夏みかんくらいしか知られていない。非常に残念だなと思っていました。そこでひらめいたのがご当地コッペパンです。コッペパンなら、フグのフライや外郎など、いろいろな特産品を挟むことができますし、ソースやドレッシングなどの調味料とコラボすることも可能です。また、いつでもどこでも食べられる気軽さもあるので、山口県の魅力を発信するツールにぴったりなのではと考えました。

どうして山口市で創業しようと思われたのですか?

創業するなら自分が生まれ育った山口県で、という思いがありました。とはいえ、山口に知り合いもいなければ、頼る親戚もいない、完全にゼロからのスタートでした。半年経って目処が立たないようであれば諦めて東京に帰ろうと思い、2018年7月、単身で宇部に移住し、出店場所を探し始めました。事業を成功させるためには、いかに初期投資を抑えてスタートできるかが重要です。さらに、商圏の人口の多さもポイントです。そこで、補助金の有無、人口などを調べた結果、条件が最も良かった山口市に「特産caféやまのわ」を開業することにしました。また、山口市米屋町にある「やまぐち創業応援スペース mirai365」に入居し、サポートしてもらっています。

創業に向けてどんな準備をされましたか?

東京・練馬区の起業塾に3カ月間通いました。また、パンに関する知識や技術を身につけるために、東京のパン屋で半年間ほど修行を積みました。宇部に移住してからは、まずは自分のやりたいことを知ってもらおうと、うべスタートアップ(うべ産業共創イノベーションセンター 志)宇部商工会議所、宇部市役所、山口県物産協会などに飛び込みで挨拶をして回りました。そこで補助金などの創業に関する情報を収集しながら、生産者やメーカーを紹介していただきました。特によく通ったのが「山口県よろず支援拠点」です。ここは、個人事業主や中小企業のための無料経営相談所。デザインやマーケティング、雇用や税理関係など、さまざまな専門家が在籍されているので、ワンストップで問題を解決することができました。創業に対して悩みを抱える個人事業主にはベストな相談窓口だと思います。

創業に向けて大変だったことは何ですか?

「山口県の食材に特化したコッペパンだけを販売する」というビジネスプラン自体を周囲に理解してもらうことが大変でした。まだ販売実績がなかったため、みなさんがよく知っているような有名メーカーの協力を得て、知名度の高い具材を使うことで、それを補おうと考えました。プレゼン資料を作成して、各社にコンセプトを丁寧に説明して回った結果、鹿野ファームや深川養鶏などの有名メーカーと契約を結ぶことができました。おかげさまで、これまで200品目を超えるご当地コッペパンを開発・販売することができました。

創業資金はどうされたのですか?

自己資金と銀行からの借入でまかないました。テナント料の安価な山口市中心商店街「マルシェ中市」に出店することで、創業資金はもちろん、月々のランニングコストも抑えることができました。また、(公財)やまぐち産業振興財団「やまぐち創業補助金」、山口市の「あきないのまち支援事業補助金」も活用し、試作用の原材料費や屋台の什器費用に充てました。補助金はいつでも申請を受け付けているわけではないので、起業する1年位前から募集状況をこまめにチェックして準備を進めていきました。

創業後、これまでの状況はいかがですか?

起業当初から「マルシェ中市」が店休日にはイベントに出店することを念頭に置いていました。おかげさまでイベントに出店するたびに大盛況。県内各地のイベントに呼んでいただけるようになり、ある程度の知名度を獲得することができました。開業から順調に売上を伸ばし、これからというときにコロナ禍が直撃し、売上が大きく減少。そんなときに、コッペパンの製造をお願いしている「サビエルカンパーナ」から、フランチャイズ契約のお声がけをいただきました。そして2020年12月に、アルク小郡店内に2店舗目となる「サビエルカンパーナ&特産caféやまのわ」をオープン。これによって、売上の安定化と創業時からの課題であったパンを焼く設備を確保することができました。

創業して良かったことは何ですか?

一番は人脈を広げられたことです。山口県に移住して半年で約1,500人と名刺を交換しました。また、事業内容やお金、時間など、自分の意志で動かしていけるのも創業して良かったことだと思います。自分のモノサシで思い描いたことを実現できる自由度の高さは、サラリーマンを続けていては実感できなかったことですね。

今後の目標を教えてください。

山口県の魅力をもっと全国のみなさんに知っていただきたい。そのために、パッケージに印刷したQRコードから県内の観光地や特産品などの情報を提供する動画を見られるようにしたり、マイクロツーリズムと連携して周遊プランを紹介したり、情報発信に力を入れていきたいと思っています。また、冷凍コッペパンを開発し、障がい者にコッペパンの製造を委託することで、就労支援にもつなげていきたいと考えています。

最後に、創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

売上アップのカギを握るのは人脈づくりです。知見や資金力のある方からアドバイスやサポートを受けることで大きな成長を遂げることができます。まだ実積がない中、不安に感じることもあるかもしれませんが、臆することなく「これから展開するビジネスプランを聞いてもらいたい!」「協力してほしい!」とぜひ熱意を伝えてください。 一方で、創業には収入面での不安定さというリスクも伴います。それをカバーするのは、自分がやっている事業が「楽しい!」と思えること。目指すゴールに近づいている実感が得られるのは、創業の醍醐味だと思います。どんなときも自分を信じて、思い描く理想に向かって歩み続けてください!