創業者紹介

bespoke shoes N.Fukuyama

福山 直樹

Naoki Fukuyama

憧れだった靴職人になり、
オーダー靴専門店を創業。
今後は県外展開も視野に。

福山 直樹48years old

Naoki Fukuyama

周南市出身。高校卒業後、カメラマンとして働く中、趣味で始めた革細工に魅了され、靴職人を目指すように。東京の専門学校で靴づくりを学んだ後、徳島の義肢装具製作会社で特殊靴の技術も磨き、山口県にUターン。2016年3月、豊かな自然に囲まれた鹿野の地にオーダー靴の専門店「bespoke shoes N.fukuyama」を創業。
 
bespoke shoes N.fukuyama
創業:2016年3月
住所:周南市鹿野上2865-3
HP:http://www.n-fukuyama.com

九州の大学を中退後、カメラマンとして活動していた福山直樹さん。「東京でカメラマンをする」という目標に向かって進んでいましたが、趣味で始めた革細工に次第に魅了され、その夢は「オーダー靴の職人になること」へと変化していきました。靴職人を目指して東京の靴専門学校で学んだ後、徳島の義肢装具製作会社で特殊靴製作の技術を磨き、2016年3月、地元・周南市にてオーダー靴専門店を創業しました。現在、靴職人として活躍する福山さんに、創業までの道のりや、創業後の苦労、今後の目標などをお聞きしました。

これまでの経歴を教えてください。

地元の高校を卒業して九州の大学に進学しました。九州や地元・周南市の写真館で働いた後、東京の靴専門学校に進学。その後、徳島にある義肢装具を作る会社に就職し、それから再びUターンして、2016年3月にオーダー靴の専門店「bespoke shoes N.Fukuyama」を創業し、現在に至ります。

靴職人になろうと思われたきっかけは?

カメラマンとして東京で活動することを考えていましたが、その前に心身ともにリフレッシュをしようと一旦地元に戻りました。その時に「東京で活躍するには、他人に負けない自分だけの強みが必要だ!」と考え、それが見つかるまで上京を延期することにしました。それから、周南市内の写真館で働きながら自分の強みを探し始めたのですが、これがなかなか見つからなくて…。周りや業界の状況、自分の適性を冷静に考えた結果、東京でカメラマンをするのは難しいという結論に至りました。「さあ、これからどうしようか?」と将来を考える中で、当時趣味でやっていたレザークラフトを仕事にできれば…という思いが自然に芽生えてきました。財布やキーケースなどの小物?、それともバッグ? いろいろと考えた結果、一人ひとり足の形や歩き方が違う「革靴」は、挑戦しがいがありそうだと思い、東京の靴専門学校に進学することにしました。 大学生の頃から「いつか起業して自分の力を試したい!」という思いを持っていました。東京の靴専門学校を卒業後は、差別化を図るために義肢装具製作会社に就職し、さらに高度な技術を身につけました。試しに個人で靴のオーダーを受け始めてみたのですが、実際に自分一人でやってみると、お客さんの生の声が聞けたり、目の前で正直な反応を見ることができたりなど、会社員時代とはまた違った面白さを知ることができました。それで、創業したいという思いがますます強くなっていきましたね。

徳島ではなく、山口で創業されたのはなぜですか?

住みなれた土地でもありますし、また両親もいるので、いずれは地元に帰ろうと思っていました。妻の実家も山口県内ですから、Uターンするのはごく自然な流れでしたね。正直なところ、このまま徳島で…と考えた時期もありましたが、自分も妻も、徳島で創業し生活を続けていくことに不安がありました。それで、物心両面でサポートが受けられる地元の周南市に戻って、新しく工房を構えることを決断しました。

周南市の中でも、なぜ鹿野を選ばれたのですか?

工房を構えるにあたっては、3つの条件がありました。ひとつ目が「実家からあまり離れていないところ」。ふたつ目が、靴づくりに専念できる「ゆったりと心地のいい時間が流れているところ」。そして最後が、遠方のお客様もアクセスしやすい「インターチェンジが近くにあるところ」。以上の理由から、鹿野がベストだと決めました。

創業に向けてどのような準備をされましたか?

靴作りに必要な道具はほとんど揃っていたので、主な準備は物件探しでした。が、思うような物件がなかなか見つからず、結局、半年もかかってしまいました。その間は貯金を少しずつ切り崩し…。それでもギリギリだったのでアルバイトをして、どうにかしのいでいきました。ようやく物件が見つかってからも、明け渡しまでに、またさらに時間がかかり…と、本当に苦労しましたね。無事入居日が決まり、改装工事に入ってからはあっという間でした(笑)。

改装費用などの創業資金はどうされたのですか?

鹿野町商工会の個別相談を活用して作成した事業計画書を元に、周南市の創業支援制度に申込をして創業資金を調達しました。地元ということもあり手厚くサポートしてもらえ、本当に感謝しかありません。また創業してからも、小規模事業者持続化補助金を利用して、チラシの制作やサンプルの靴を作ったりするなど、今でも大変お世話になっています。今後も、申込ができる補助金・助成金制度があれば、積極的にトライしていきたいですね。

現在の状況はいかがですか?

創業してすぐは、各新聞社・テレビ局が取材してくださったおかげで、多くのお客様が来店してくださいました。ただ、最初の勢いが落ち着いてきたときに、「どうやって集客したらいいんだろう…」と最初の壁にぶつかりました。いつの間にか「待ち」の体制ができてしまっていたんですね…。現在は、ホームページやSNSを通じて情報発信をするなど、積極的に宣伝活動を行うよう心がけていますが、まだ最初の勢いは取り戻せていません。商品価格や仕入れ先について何度も見直しをしたり、新規事業の立ち上げを進めたりと、日々、試行錯誤しながらやっているところです。

苦労したことや失敗したことはありますか?

創業当時は、あまり深く考えずに高価な革をバンバン仕入れていました…。結局、使い切ることができずに、今でもその革が残っています(笑)。あとは、靴を作ることだけを考えてスケジュールを組んでしまって、日常生活が置き去りになってしまったこともありました。また、できるだけ早くお客様にお届けしたいとギリギリの納期設定をしていたことで、ちょっとしたトラブルが起こってしまった時に、上手く対処できなかったことも…。今はその反省を踏まえ、ゆとりある工程を組むようにしています。

創業して良かったことは何ですか?

会社員だった頃に比べ、自分の思うように時間が使えるようになったことですね。たとえ忙しくても自分がやりたいようにスケジュールが立てられるので、ストレスは随分軽減されました。あとは、心を乱すことがなくなり、平穏に過ごせるようになりました。カメラマンだった頃や会社員だった頃は、やっぱり誰かと自分を比較して羨ましく思ったり、妬ましく思ったり…と、心がザワザワしていた部分があります。今は鹿野の豊かな自然とゆったりと流れる時間の中で、じっくりと靴に、「ものづくり」に向き合うことができているのでとてもリラックスした日々を送っています。まあ、経済的な課題は山積みなんですけどね(笑)。

今後の目標を教えてください。

今はまだアルバイトをすることもあるので、早くオーダー靴に専念できるようにしたいですね。そのために、現在、信頼できる職人さんと手を組み、セミオーダーの割合を高めていく計画を立てています。私たちのセミオーダーは、セミオーダーといってもかなり自由度が高いもので、いうならば、セミオーダーとフルオーダーのちょうど中間くらいです。将来的には県外への展開も考えています。もう一つは靴教室の開催です。これは単に売上だけを目指したものではなく、一人でも多くの方に「ものづくり」の楽しさを伝えたい、手作り靴の奥深さをもっとたくさんの人に知ってもらいたいとの思いから生まれました。

創業をお考えの方にアドバイスをお願いします。

一人でできることは限られているので、自分だけで考え込むのはやめて、困ったことやわからないことは、地域の商工会議所の方や創業の先輩、仲間たちに相談することをお勧めします。いつも答えが見つかるとは限りませんが、確実にヒントはもらえます! あと事業計画はガチガチに固め過ぎず余裕を持っておくことです。そうすると気持ち的にも少し楽になりますよ。最後は、一度創業すると決意したら、とにかく粘って続けることです。「絶対にやめない!」という気持ちで、ぜひ頑張ってください。