創業者紹介

株式会社トルビ

沖野 充和

Mitsukazu Okino

県外から多くの人を下関に!
関門海峡が見渡せる絶景ゲストハウスを
地元下関の魅力発信基地にしたい。

沖野 充和48years old

Mitsukazu Okino

下関市出身。市内の高校を卒業し、東京の大学の建築学科に進学。建築事務所で3年働いたのち、一級建築士の資格を取得して友人と二人で独立。その後、単独で建築設計事務所を設立。東京で出会った山口出身の経営者たちに刺激を受け、ゲストハウス「ウズハウス」を運営する株式会社トルビを地元下関で創業。
 
株式会社トルビ
創業:2016年3月
住所:下関市阿弥陀寺町7-8
HP:https://uzuhouse.com/

東京で建築設計事務所を営んでいた沖野充和さんは、地元の地域貢献に情熱を注ぐ山口県出身の経営者たちに刺激され、「自分も故郷の山口で何かしたい!」と考えるようになりました。また、一級建築士として数々のリノベーションを手がけるうちにシェアハウスやゲストハウスの居住形態や暮らしを知り、「下関でゲストハウスをしたい」という思いに至ります。そして、2016年8月、ついに関門海峡が見渡せるゲストハウス「ウズハウス」を下関にオープン。東京と山口を往復しながら「ウズハウス」を運営する沖野さんに、創業までの道のりと現状、これからの目標などをお聞きしました。

これまでの経歴を教えてください。

1年間の浪人生活を経て、東京の大学の建築学科に進学しました。卒業後は、建築事務所に就職したのですが3年1ヶ月で退職。それからしばらくは、フリーターのような生活を送りながら一級建築士の資格を取得しました。その後、友人と二人で建築設計事務所を立ち上げましたが、諸事情で解散。それで、現在も株式会社トルビと並行して経営している沖野充和建築設計事務所を設立しました。最初は、新築メインでやっていたのですが、35歳の時に某テレビ局のリフォーム番組に出演したところ、依頼のほとんどがリノベーション案件になっていって(笑)。その流れで、ゲストハウスやシェアハウスなども手がけるようになって、漠然とですが、いつかゲストハウスができればと考えるようになりました。

下関での創業を決めたきっかけは何だったのですか?

東京の山口県人会で知り合った方に、山口県出身の経営者が集う会にご招待いただきました。最初は「いえいえ、私なんかが…」とお断りしていたのですが、「個人事業主も立派な経営者」と説得されて参加するようになりました。そこで出会った経営者の皆さんは、地元山口を盛り上げようと、それぞれいろんな活動をされていたんです。みなさんの生き生きとした表情を見るうちに、私も山口で何かしたいと思うようになりました。実は以前から、県外の方に下関の魅力が十分に伝わっていないのではと思っていました。東京で下関について聞いてみると「下関? ああ、フグのね」「通過したことはあるけど、降り立ったことはない」と言われて…。それでゲストハウスを作れば、下関の認知度がさらに高まり、全国にその魅力が発信できるのではと考えました。それが株式会社トルビの創業を決めたきっかけですね。

創業前にどのような準備をされたのですか?

インターネットで物件探しをするところから始めました。現在の物件は、不動産屋から借りるのは難しいと言われたのですが、関門海峡が目の前に広がる、この素晴らしい景色をどうしても諦めることができませんでした…。下関に住む友だちや後輩、知り合いなどに「オーナーをご存知ないですか?」と声をかけたところ、たまたまオーナーを知っている方がいらして! お会いして、この事業に対する想いや構想についてお話ししたところ、快くOKのお返事をいただくことができました。諦めずに行動をして本当に良かったと思いましたね。以前に創業を経験したことがあるとはいえ、資金の借入はしたことありませんでした。事業計画書の書き方は、クライアントにご提案する土地活用の事業プランを作っていたこともあって、概要についてはなんとなくわかっていたつもりだったのですが、金融機関に事業計画書を提出したところ、「カフェの1日の目標来店数は?、客単価は?、売上見込みは?、その根拠は?」などの細かな点についてご指摘をいただきました。具体的な顧客像をイメージしながら事業計画書の改善を重ね、審査に少し時間はかかりましたが、無事に融資を受けることができました。

クラウドファンディングを利用されたと聞きましたが?

このビルは、築42年で10年以上使われていなかったので予想以上に老朽化が進んでおり、全面的な改修が必要でした。しかも考えていたよりも大きな建物になったことで、当初の予定よりも改修費用がかなり膨らみました。なので、もう不足分はクラウドファンディングで補うしかないと…。しかし、これもなかなか苦労しましたね。当時、クラウドファンディング自体があまりメジャーではなく、まずは一体どういうものなのかを説明していかねばなりませんでした。このプロジェクトを一緒にやってくれたメンバーは10名程度いたのですが、みんなでとにかく知り合いにお願いのメールを送りまくりました(笑)。あとは説明会を開催したり、さまざまなイベント会場でプロジェクトの紹介させてもらったりと、本当に地道に賛同者を募っていきました。エントリーの期間は90日としていたのですが、達成できたのは75日が経った頃でした。本当にホッとしましたね…。クラウドファンディングでお金の面はもちろんですが、認知度アップにも繋がったので利用して大正解でした。

その他、創業で苦労されたことはありましたか?

やっぱりお金の面ですね。通常は、クライアントが設計事務所に要望や予算を伝えて、設計事務所が工務店に指示を出して、という流れで工事が進んでいきます。でも私の場合は、私自身がクライアントであり設計事務所でもあるので、予算のリミットが効かなくなってしまうんです(笑)。今から事業をやっていく人間としてはコストを抑えないといけないのですが、設計事務所の人間としてはちょっとお金をかけてでもいいものを作りたいというジレンマがあり、ものすごく苦悩しました。結果としてはうまくコントロールできたとは思いますが、中には予算をかけすぎたな…っていう部分もあって、非常に反省しています。でもこれは私が建築士だからこその悩みで、特別なパターンですね、きっと(笑)。

創業後の現状はいかがですか?

ゲストハウスは、季節による影響を非常に大きく受けるので、売上の変動は激しいですね。いかにして、その波を小さくさせるのかが課題です。カフェについては、かなり地元のお客様に浸透して、リピーターになってくださる方も増えてきています。ただ、外からだと、2階にも様々なジャンルの本を並べたライブラリーや関門海峡を間近に見渡せるカフェ&バースペースがあることや、3階にレンタルイベントスペースがあることがわからないので、もっと情報発信を強化していかなければいけないなと思っています。

現在のワークバランスはいかがですか?

子どもが通っている幼稚園をとても気にいっているので、東京に妻と子どもを残して単身赴任をしています。だいたい、下関に3週間、東京に1週間のペースで行ったり来たりしていますね。下関にいる間はほぼ毎日仕事をしていて、そのほとんどの時間をウズハウスのカフェスペースで過ごしています(笑)。建築設計事務所の仕事も継続はしていますが、ウズハウスの運営につきっきりの状態なので、今はお断りさせていただくケースの方が多いですね。もう少しウズハウスの経営が安定してゆとりができてきたら、設計の仕事もまた積極的に受けるようになるかもしれません。

創業して良かったことはありますか?

これまでとやっていることが全く違うので、毎日新鮮な気持ちで楽しめています。そのまま建築設計事務所1本でやっていくという人生でも良かったと思いますが、自分の世界や視野の狭さを感じることも多くて…。設計の仕事、特に住宅の仕事は、数少ないクライアントだけとのコミュニケーションになりがちなんですよね。それに比べて今は、毎日いろんなお客様がカフェに来てくださって、私が知らない場所から足を運んでくださる宿泊客との出会いがあって、山口を盛り上げたいと頑張ってらっしゃる経営者のみなさんとの出会いがあって、たくさんの刺激があって面白い日々を過ごしています。もちろん疲れることもありますが、ワクワク感の方が断然勝ってますね(笑)。

今後の目標を教えてください。

安定的に継続していくために、SNSを使った情報発信や、地域の人を巻き込んだイベントの開催にもっと力を入れていくことです。大きな目標としては、もっと下関を訪れる人を増やしたい、下関を知っている人を増やしたいと思っています。ウズハウスが、そういう役割の一端を担えるといいなと思います。さらに、「下関にはウズハウスが必要だ!」と言ってもらえるともっと嬉しいですね(笑)。

これから創業される方にアドバイスをお願いします。

協力してくれる仲間を見つけることをおススメします。一人で始めるのと、手伝ってくれる仲間と一緒に始めるのとでは、物事の進み方やスピードが全然違います。頼れるところはしっかり頼るといいと思います。もう一つは、資金計画をちゃんとすることですね。私の反省点でもあるのですが、創業資金の借入のその先には必ず返済がありますし、運転資金も必要です。後々のことを考えてできるだけ苦労しないようなプランを練ることをおススメします。創業、経営は楽しいことばかりではありませんが、この山口県を盛り上げるために一緒に頑張りましょう!